The Signal and the Noise: The Art and Science of Prediction
この本の著者、ネイト・シルバーは、あのブラッド・ピットが演じた映画「マネーボール」に出てくる統計分析家のモデルとも言われている人物。
シルバーが予測する分野は広い。メジャーリーグの野球、大統領選挙、経済情勢の変化、さらには天気予報、地震予知、地球温暖化などにも及ぶ。
彼の名前が米国のマスコミで一躍有名になったのは、2008年の大統領選挙での予測。これが見事に的中。そして、2012年の大統領選挙においては、
何と全米50州全ての予測を完全に的中させたことで、彼の予測のメカニズムの正確さにマスコミが騒然となった。
この本でシルバーは、様々な分野(野球、経済、政治、チェス、天気、地震など)における予測のメカニズムを紹介してくれている。
それは、いかに多くのノイズの中から的確にシグナル(信号)を見つけ出すかによって、的中度が左右されるということだ。
もちろん、分野によっては予測がしやすいものもあれば、逆に予測が難しい分野もある。
その違いは、データの変動パターンの複雑さによって生じ、野球やチェスは、変動パターンがシンプルなので予測がしやすく、
逆に地球温暖化やテロリズムなどの予測は、変動パターンンが複雑なため予測が難しいとのこと。
さて、では膨大な「ビッグデータ」から如何にして正確な予測を導き出すのか?
その鍵は、結局のところ冷徹な「自己認識」次第だと彼は説明する。
それが確立されていないと、人はどうしても自分が望む結果をデータから読み取ろうとしてしまい、
結果としてその「思考バイアス」が間違った予測をしてしまうものだとしている。
また、予測(データ分析)にあたっては、常に「謙虚さ」も必要だとも説明している。
人は、自意識過剰になったり、傲慢になると、偏った予測をしてしまうからだ。
ネット時代となった今、一般の人でも、簡単に膨大なデータに接することが可能となったが、
その分、ノイズも増え、必要なシグナルが見つけ出せなくなってきていると著者は警告する。
従来よく言われていた、ビジネス思考モデルの一つに、「仮説と検証」があるが、
自分が立てた「仮説」に拘(こだわ)り過ぎると、「検証」行為そのものが間違った結論へと導くことになるわけだ。
ネイト・シルバー並みの予測が出来れば、日本の政治家も
間違った方向へ国民をミスリードすることもなかっただろう。
結論は、意外なほどあっけないが、その思考プロセスを学ぶことは非常に有益である。
Into Vision [DVD]
アート・オブ・ノイスが2002年にリリースした映像集で、貴重なライブ映像が1時間51分収録された映像アルバム。
単にライブ映像だけでなく、独特のセンスが光る映像の編集が素晴らしい。
映像が収録されたのは1999~2000年で、収録されている曲はCDで未発売の録音(ライブ)なので、このDVDでしか聴けない。リュージョンは0(フリー)なので、日本のDVDプレイヤーやPS2でも再生可能だった。
ケースがSUPER JEWEL BOXというCDのケースと同じ材質で、CDケースより大きく、ビニール製のケースとは違い割れやすいので、海外から送ってもらうとケースが破損している場合が多いのが難点。
Best Of Art Of Noise
ベストにして、収録時間が33分とオリジナルアルバムより短かったりするのが気になるが、そういう面もどこかアート・オブ・ノイズっぽいらしいと思わせるどことなく捉えどころのない不思議なユニットである。ZZTレーベルの看板ユニットであり、レーベルカラーを象徴するような実験的でありつつも強い印象を残すサウンド作りだった。このベストが33分で10曲という大変短い体裁なのは、全てを詰め込んだベストという捉え方ではなく、ある種サンプラー的な役割のためのベストなのかもしれない。おそらく、初めて聴いたリスナーに対して、ここから彼らのオリジナルアルバムに触手を伸ばしていった時に、彼らの全貌が見えていくような意図があるのではないだろうか。