ナチ占領下のプラハで、「死刑執行人」と呼ばれるナチ高官が暗殺される。 ナチは報復として、犯人が名乗り出るまで市民を処刑するという暴挙に 出るが…。 時の宣伝相ゲッペルスに映画部門責任者への就任依頼を受け、アメリカ へと亡命した経緯を持つラング(彼自身はユダヤ人)による、悪夢的ムー ドで描かれる反ナチ・サスペンスの傑作。名手ジェームズ・ウォン・ハ ウによる光と陰のコントラストの強い撮影が、プラハの町並みを出口の ない迷路のような印象にしている。加えて、ラングの畳み掛けるような サスペンス演出と生々しい暴力描写がより不安感を煽る。 映画史的には、アメリカに亡命中だった劇作家ブレヒトの原案・脚本で あることも有名で、「Aに話せば、やがてB、Cに伝わり、最!後!にはG(ゲ シュタポ)にたどり着く」というウォルター・ブレナンの名セリフは、彼 のアイデアによるものだそうだ。 キャスティングも相当異色で、小悪党的な役が多かったブライアン・ド ンレヴィを主役に、気のいい人物役のジーン・ロックハートを悪役に据 えたあたりは、ラングの意欲のあらわれといえる。 本DVDは、かつて劇場公開され、その後ヴィデオ・LDで発売された120分 版より約20分も長い完全版。それ自体で、大変意味のあるDVDなのだが、 残念ながら画質があまりよくない。99年、東京の三百人劇場で行われた 「フリッツ・ラング映画祭」での上映プリントをそのまま使っているせい だろう。
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