一度、旅先の京都のホテルで見て、また観たいとずっと思っていた。劇中に秋刀魚はでてこない(?)のだが、定年を迎える父、嫁ぐ娘、などそれぞれに訪れる「人生の旬」みたいな季節は、一方で生命力に満ちていながら、その一方でどこかほろ苦くもあり、それはまるで旬の秋刀魚のようだ、というメタファーがよく描かれている、と思う。
昭和十一年から昭和二十八年にかけて作られた九作品。まずお買い得。 小津作品を観た事が無くて、観たいと思ったがレンタル屋に無かったので購入。 見る人が見れば画期的なカメラワークとかが評価対象になるらしいが、技術的な事はわかりません。 どの作品も親子夫婦親戚といった、誰でも身近にありそうなエピソードをちょっと上品に描写しているのだが、特筆すべきは戦時中に発表された「父ありき」においても、国策映画的な臭いが全く無く、家族を描いている事だ。 ぶれずに家族、人間を描写するこのスタイルに痺れる。かっこいい。 そして「あの頃の日本人」の姿を作中に見出す喜び。 笠智衆さんが昔から変わらないのが、ほっこりポイントですな。
妻が愛人と飛び出し残されたのは夫の2人の娘だけ。 妹は歓楽街に飛び出し放蕩に耽る始末。 2人をかばうかのように支える原節子が美しい。 淡々とした会話と所作に思わず涙してしまいそうな 昭和の家庭崩壊の縮図。 この頃からもう父親の威厳は失われつつあったのか。。。
何回目かの『東京物語』&原節子ブームの折に出版された写真集。1992年出版。
日本の俳優で誰が好きかと問われたら、少し悩んで女優なら原節子、男優なら笠智衆と答える。もちろん監督は小津安二郎が好きだ。
アイドル写真集でお馴染みの小沢忠恭氏撮影の写真集。美しい自然の中で笠智衆氏を捉えている。
出版当時はなんでこんなもの出すんだと思ったものだが、笠智衆氏の最晩年の姿が捉えられていて、笠智衆ファンだけでなく、原節子&小津安二郎ファンにももっと手に取ってもらいたい写真集である。
口述筆記で30分もあれば簡単に読めてしまう。 監督に寄せる思いがささやかに語られている。 巻末には小津監督の作品リストと笠さんの出演リストが添付。 笠さんは見たままの人で人様を深くを語らないが、 こちらとしてもゴシップに近いような話には興味もないので、 その礼節さがとても気持ちがいい。 読後、殆どの本は年2回まとめて売却するのだが、 この本は処分出来ず「あるがままに」と共にいつも手元にある。 小津全作品、および関連本の殆どをコレクションしているが、 やはり笠さんは別格である。
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