アマデウス [DVD]
この映画の内容は、極めて意味深で数多くの事を我々に教えてくれる。
自分はこの映画を通して、「殺意のある"真の敵"は微笑みながら近づいてくる」という事実を良く理解した。
また殺意を抱かれてしまったモーツァルトにも問題がある。自分の才能を鼻にかけ、相手をコケにしなかったら自分自身も干される事もなく、また悲劇的な運命を辿る事もなかったであろう。
サリエリの考え方も、ある意味で納得出来る。自分は"敬虔なる信者"である。にも関わらず、神は自分でなくモーツァルトのような下劣な人間に才能を与えたと一方的に思い込んで自分の忌まわしき願いを正当化する。
このような事は、日常我々が気づかないことで無意識に行っていることではないだろうか??
サリエリは結果、自らの信仰を捨てモーツァルトに自分の真意を悟らせずに微笑みながら、さも援助するように近づき間接的な"殺し"をするが、結果ずっとそれを引きずり自ら苦しむ事になる、、、誠に見応えのある映画です。
モーツァルト:フィガロの結婚 [DVD]
イギリス、グラインドボーン音楽祭1994年のライブ。イギリスのオペラは、演劇的にも見ていて面白く演出していて、歌だけに終わらないものが多いが、この『フィガロ』も歌がよいだけでなけでなく、演技でもなかなか見せる。スザンナを歌うハグリーはイギリスを代表するソプラノだと思うが(ブーレーズ指揮でメリザンドを歌っているDVDがあるが、これもすばらしい)、いつもどおりの見事な表現力の演技と歌唱を披露している。フィンリーのフィガロもコミカルな2.5枚目風をよく演じている。伯爵のシュミット(リートもうまいドイツのバリトン)も、スケベそうな味を出している。他の演奏での伯爵よりも若々しいところがリアルである。フレミングの伯爵夫人は、この演目での「売り」のようだが、ちょっと貫禄がありすぎる気もするが、ソロは見事だ。ケルビーノのトトロヴィチ(私ははじめてきく歌手だが)は、この役に必要な少年愛をそそる可憐さに不足している気もするが、元気に歌っている。
指揮はハイティンク。あまりオペラをよく指揮者ではない気がするが、厚みがあり、しかももたつかず、温かみもある。二幕と四幕のフィナーレの盛り上がり方も自然で、胸が熱くなる。
最後に、何と言ってもうれしいのは、DVDとは思えない価格の安さ。おすすめです。
バッハ:インヴェンションとシンフォニア
幾分速めのテンポ設定だが、良く整っている。
ウェーバージンケはカール・リヒターのライバルだった事もある隠れた名演奏家。
確実なテクニックの上に洗練された「モダンなバッハ」を堪能させてくれる名演。
学習者ならずともバッハ愛好家なら一聴をお薦めします。
モーツァルト 天才の秘密 (文春新書)
生誕250周年ということで、またモーツァルトが流行っているらしい。しかし一般的にモーツァルトは、孤高の天才で神童で非の打ち所のない、まるで子供の読む伝記に書かれているような人間か、音楽以外はまさに狂人のような「紙一重」の変人な天才のように扱っている本が多い。それらの捉え方には一理はあるのかもしれないが、結局のところ、安易なステレオタイプへの当てはめでしかない。
この本は、そういう捉え方とは一線を画し、モーツァルトの時代や生き方と音楽の関係にまで踏み込んで考察しているところがすばらしい。モーツァルトに興味がある人にはぜひ一読を勧めたい。