KIRINJI RMX(2)
リミックスとは解体し、解釈を加えて再構築する作業です。ゆえに既にあまりにも完成されてしまっている楽曲の姿は、リミキサーを、そしてリミックス品を聞く私たちをも尻込みさせるものです。
ですが、安心してください、そこ行くお兄さん&お姉さん!
決して楽曲は死んではいません。壊れてもいません。そのエッセンスは凝縮されて、新しい形で紡ぎ出されています。完成と解体。そのぎりぎりの境界線の上にこのアルバムは存在しているのです。それを中途半端とみなすか、愛ゆえにと涙するか、その判断はあなた次第。
珠玉のメロディと職人たちの愛と技が集結したこの傑作を聴き逃すのは、本当に損ですよ。
(なかでも「悪玉」はいろんな意味で最高でした(笑))
私生活
坂本龍一とのコンビの3作目(1999年作)。
本作には、半野喜弘と竹村延和も作曲陣として参加し、より通好みのエレクトロニカ仕立てのサウンドになっている。逆に言えば、前作にまであったクールなテクノポップ風な分かりやすさは減退したということであり、これまでの彼女のアルバムの中で、最も取っ付きにくいアルバムにはなっている。またどこか架空のサウンドトラックのような趣を持った作品であり、流れる日常の儚さを描いた映画、まさにタイトルの「私生活」というのがぴったりといった感じだ。アルバム中、中谷美紀の会話も効果的に使用され、女優としての能力をうまく作品に取り入れられていると思う。女優として確固とした立ち位置を持ちながら、ここまで実験的なアルバムを作りあげたことは、なかなかセンセーショナルなことだと思う。その反面、前作にまであったフックの良さとメロディ志向が薄れてしまったのは、仕方ないことではあるが、少し残念。アルバム中、ハイライトといえるのが「クロニックラヴ」しかないのは、やはり淋しさを感じる。