本書に収められている短編作品は、青年誌、特に先に挙げた『ガロ』や『COM』を中心に活躍した作家のものが多く、いわゆる少年漫画、少女漫画を意図的に省いた偏った編集となっている。(それらを期待する読者には、姉妹本の『ギャグマンガ傑作選』、『ヒーローマンガ大全集』、『少女マンガ大全集』などがしっかりと用意されている。こちらも大充実の内容。)収録された多くの作品は、単行本が絶版中であったり、全集を購入しないと読むことの出来ない貴重なものばかりで、これだけの価値ある短編集はまず他に無いと断言出来る。
現在、こうした表現の漫画を「サブカル系」と称する向きがあるが、そこには往々にして、本流でない、傍流的な動向であるという蔑意が込められているように思う。しかし60年代当時には、そうした区別は特別な意味を持たなかったはずだ。多くの読者は、梶原一騎とつげ義春を同様に受容し、共感していたのであり、作家も読者も皆一様に、漫画メディアの広大な可能性を幻想していたのだと思う。そういった意味でも、60年代こそが漫画自体の青年期・青春期であったのだろう。