この漫画が他の作品と一線を画しているのは、肉体と肉体が凄まじくぶつかり合うアクション、悪と正義、愛、勇気、友情、そして筋肉美。そういう漠然とした作者のイメージのみで構築されている点にある。物語も、キャラクター達の会話も、イメージが成立するぎりぎりの部分まで削り落とされ、そ!のせいで一読しただけでは全く意味不明に感じるかもしれないが、作品が持つ圧倒的パワーは、特異すぎる画面構成の迫力もあいまって、読者の心を捉えて離さない筈である。有る意味、娯楽性の高純度の結晶ともいえる。読み進めていくうちに、意味もなく全裸でさまよう主人公を、何故か応援してしまっている自分に気がつくはずだ。本当の意味で「理屈抜きで楽しめる」ということがどういうことなのか、一時は数万円のプレミアがつき、幻とまで言われたこの漫画で体験してみるのは悪くないと思う。 読書というより、一種の幻惑体験に近いような気がする。人によっては軽い眩暈すら覚えるかもしれない。毒気を抜かれた漫画の多い昨今こそ、一段と輝いて見える衝撃作と言える。覚悟が必要だ。