エンジン/ENGINE
車盗の現場を張り込んでいた刑事。張り込み中、ティファニーのショーウィンドーに銃撃を加え宝石を持ち去った女を見ていた隙に相棒が惨殺される。
その女の影を追っていく刑事だが、その行き道は死屍累々とした血の行程だった、と言う話。ロシアマフィアや中華系マフィアの暗躍、謎の女の八面六臂の殺戮劇など、アクション要素は満載。最終局面まで正にノンストップのストーリー。
表現も矢作氏特有のウィットの溢れたものが多く、その点も評価できるのだが、女の押し出しが強すぎて正直ほかのキャラが全部飲まれてしまっている点が残念。
アクション小説が好きな人なら満足できるが、読後に意外と何も残らないかもしれない。
気分はもう戦争 (アクション・コミックス)
中ソ戦争勃発。アメリカの陰謀なのか?その時日本は?といった政治的な話の展開から、義勇軍となって戦場で戦うハチマキたちの活躍と、関係ないところで活躍する矢作、大友コンビ。カバーイラストには模型イラストでおなじみの高荷義之を使うあたりが流石である。改めて読み直してみると今の日本の置かれた状態は当時とまったく変わらない。冷戦が終わってもアメリカの属国状態である、というか米国と官僚とメディアによってそうさせられているし、そう思い込まされてもいる。この状況を打破するには・・・やはり戦争しかないのかもしれないとふと思った。
マイク・ハマーへ伝言 (角川文庫)
矢作俊彦の名を世に知らしめた処女長編。
警察の化け物パトカーに殺された仲間の敵を討つため、
若者達がそれぞれの車を駆り、復讐劇を繰り広げていく。
本作の刊行により、氏は以後しばらくニューハードボイルド
の旗手と目されることとなった。
筋立てこそ簡明だが、散りばめられた意匠、軽快な会話、
スタイリッシュな文章、類い希な比喩表現など初期作品群
の要素がほとんど揃っており、現在入手できる作品の中では、
著者の片鱗をうかがうに最適な作品と言える。