銃による犯罪が多発しているという深刻な社会問題を抱えるアメリカの病巣をえぐり出す傑作。取材した映像の単純な羅列を避け、ユーモアを交えた取材やアニメを取り込んだ説明など、その構成は従来のドキュメンタリー作品とは一線を画しており見応え十分な作品である。銃によって殺害された人の数に加え社会的背景や歴史的経緯を他の主要国と比較し、なぜアメリカだけが銃による犯罪が桁違いに多いのかを鋭く追求する分析的要素がよい。さらに、コロンバイン高校で発生した銃乱射事件のシークエンスは、防犯カメラによって映し出された映像に事件を警察に通報する電話の声をかぶせるという巧みな構成で、固唾を飲んで見てしまう。また、6歳の少女が同じ年の少年に射殺されるという事件は、何ともやり場のない悲しみに襲われ思わず涙が出てしまった。そして、映画ファンなら、あの名優チャールトン・ヘストンのシークエンスに興味が湧くであろう。全米ライフル協会会長であり「死んでも銃は手放さない」と豪語するチャールトン・ヘストンが、マイケル・ムーア監督の取材に対してどの様な反応を示すのかは、見てのお楽しみである。チャールトン・ヘストンの大豪邸の柱に、射殺された6歳の少女の遺影を置くマイケル・ムーア監督の姿が深く印象に残る。アメリカの暗い一面を浮き彫りにした、未曾有の名作と断言できる。 ボウリング・フォー・コロンバイン[レンタル落ち] 関連情報
ボウリング・フォー・コロンバイン(字幕版)
アメリカで最も影響力を持つジャーナリスト、マイケ
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