「ひとつの宿場町に親分が二人も居ちゃいけねえや」と嘆いたのは黒澤明監督作品「用心棒」に登場した飯屋のおやじ役、東野英治郎でしたが、本作では一つの宿場町に三人の親分がしのぎをけずります。賭場を仕切る最大勢力は山形勲が親分で、その組といざこざが絶えない組の親分には「悪魔くん」のメフィスト役が印象深い吉田義夫。あと一つの勢力は、台頭のスキを虎視眈々と伺う姑息な須賀不二男。そんな一瞬即発な場所へふらり市川雷蔵扮する流れ者が現れ、「用心棒」の設定よろしく三組のやくざ者の間を策を練りながら行き交う。更に幕府の軍資金ウン千万両が奪われた事件も絡み、加え血に飢え、腕におぼえのある南原宏治(←ダウンタウンの松本に顔が激似)も雷蔵の命を狙い始めたため、町民達が慌てて逃げ出すくらい宿場町は欲と血で煮詰まっていきます。上記設定から物語が進むうちに死人が増すのは想像にたやすいですが、基本は娯楽時代劇。なので、血生臭さよりも鎌を変形させたブーメラン武器が登場したり、百発百中で突き刺さる雷蔵の短剣型手裏剣(←題名の由縁)の華麗さなど、ちょっと荒唐無形感が漂う面白さがあり、軽く安心して見ていられますね。それに時々、スコアにエレキギターの音色が使われているのも愉快な点。なお、本編より予告編の方が明るく現像されたフィルムを使用していて細部がハッキリ確認でき、双方の同一箇所の明暗を見比べると面白いかと。 赤い手裏剣 [DVD] 関連情報
暗殺
攘夷倒幕の急先鋒にして、北辰一刀流の剣士
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