いや〜、往年と比較すればパワーダウンは否めないが、立派にすげぇ。 映像でも聴衆の年齢層にある意味で驚く。年配の方々が多く「この音」を聴いているんだから。 間違いなく買いですよ。
まるでステージの上で3人の男が殴り合いをしてるかのよう。聴後感は凄い嵐が過ぎ去って、草一本生えてない荒れ地に一人取り残されたような感じ。 分厚い音の塊に翻弄されるうちに、いつの間にか殴り合いに巻き込まれている感覚に陥らされるが、それが最高に気持ちよい!フリージャズのCDは何枚か聴いたが、初めて楽しめる作品に出会ったと思う。 ジャズだのロックだのといちいち線引きして音楽聴くのがバカらしくなってくるような作品だと思う。 快作です。
まず始めに、この作品は坂田明らと過激なフリージャズを営んでいたYOUSUKE YAMASHITAを期待する人は見ないほうが良いです。エネルギーの塊をぶつけるかのような(肘打ちなどの)激しい演奏内容の時代をくぐり抜けて円熟期に入り、このライブでは管楽器の緻密なアレンジを用いた壮大なオーケストレーションと、これまで築いてきたフリージャズピアニストとしての演奏を見事に融合させています。特に最後の24分にも及ぶRhapsody in blueは圧巻です。随所にビッグバンドならではのオイシイアレンジと、熱いフリーパートをちりばめたガーシュインの名曲。
進化し続ける山下洋輔を見たい方にはぜひお勧めです。
40年近く前の録音であるが、極めて高音質であることにまずは驚かされた。先年復刻再発された同じ時代のアルバムと比較しても、その音の良さが際立っている。絶頂期の「山下洋輔トリオ」のめくるめく疾走感とダイナミズムを、これほど鮮明にとらえたスタジオ録音もあまりないのではないか。とくに7本ものマイクによりピックアップされた森山威男氏のドラムスが凄い。2曲目「ミナのセカンドテーマ」における息もつかせぬブラシ捌きには鳥肌が立った。解説によれば、2チャンネルのオープン・テープとしてのみ発売された当時、定価18,000円であったらしく、ごく限られた数のマニアしか耳にしていないという(ひょっとしたら、オーディオ狂の店主が営んでいた某ジャズ喫茶では、「テープ・コンサート」が開催されたかもしれない)。かくも高音質にて伝説の「トリオ」を再聴できるのは、往年のファンとしては嬉しい限りである。このような殺気だった「トリオ」演奏は、あの時代を措いては、もうありえないだろう。折しも山下洋輔氏が、このたび、旭日小綬章を授章された。感慨無量である。
かつてタモリらと「ソバヤノニカイデオオサワギ」と喚き、各界の著名人とともに、冬でも冷やし中華を食わせろとアジった頃から、山下師匠はどれ程の季節を過ごしてきたことでしょうか。久しぶりに見るその横顔は、蕎麦と、それにも増して蕎麦を語る老若男女への敬意と好奇心を軽妙に物語る、まさに横丁のご隠居にジャガーチェンジを遂げられたように見えました。何やら「師匠」と呼ぶに相応しい風情なのですな。
エッセイにおいてのかつての過激さにのめりこんだファンも多い師匠の、その枯淡に失望させられるかと言えばとんでもない。硬軟入り乱れた蕎麦好き人間の、その蕎麦への愛憎を物語る口調を、見事に鷹揚な伴奏で包み込む名人芸は今の師匠ならではの至芸でしょう。
山下師匠…転じて庵主の、その温かくもキビシイ蕎麦道の真髄を、ひとくさり目の前で語ってもらう至福に包まれてみたい、と心底から願ってしまう愉しさに満ちた一冊であります。蕎麦好きもアンチ蕎麦人間も、一読に損はありません。
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