ひとつ前に読んだ黒川博行氏の小説「落英」には覚せい剤捜査について緻密にえがかれ、非常に迫力ある作品でした。今回、私の好きな逢坂剛さんの新作も覚せい剤捜査に身を投じる刑事ものということで、大いに期待をもって手にしました。事件の契機と展開が少し軽いかなというのが印象です。どちらかといえば「ユーモアミステリ」に近いように思います。ただ、ユーモアと言い切れるほどの笑いがあるわけでもなく、やや一本調子な印象です。私にとって逢坂剛さんといえば「カデイスの赤い星」の重厚で仕掛けたくさんのストーリーで衝撃を受けて以来、最も好きな小説家です。それ以降の大河調ともいえるスペインもの、さらには迫力満点の百舌シリーズとむさぼるように読んで来ましたが、今回の作品は私が好きだった逢坂作品とは少し路線が違うような気がしました。カディスの赤い星から四半世紀近い時間が経つわけですので、作風もかわるというか、ジャンルを広げて作品作られているのだと思いますが、私としては「重厚なスペインもの」や「大迫力の百舌シリーズ」路線の逢坂作品を期待したいと思います。
倉木vs百舌シリーズ?最初の物語です。 この一冊を偶然書店で見つけたのが始まり。最終冊?の‘よみがえる百舌’まで一週間、一気に読破してしまいました。さまざまな事件を通して多くの人物がうごめく様はハードボイルドの一言では片付けられない奥の深さです。春の夜、寝不足覚悟で挑戦してください。
直木賞・日本推理作家協会賞受賞作であり、作者の魅力の詰まった代表作。
PRマンの漆田は、日野楽器がスペインから招いた著名なギター製作家ラモスから、サントスという日本人のギタリストを捜してほしいと頼まれる。20年前ギターを求めスペインを訪れたサントスの腕は認めたものの、製作が追いつかずギターを譲れなかったことが心残りになっているというのだ。
卓越したギターの腕を持ちながら帰国後忽然と姿を消してしまったサントス。サントスを探す漆田は、彼の息子と思われるパコというギタリストをてがかりにサントスの行方を追うが、やがてラモスがサントスを探す理由の一つに行き当たり、巨大な事件の波に飲み込まれていく。
上巻では、「カディスの赤い星」の正体とそれに込められた目的が明ら!かになる。
サントス探しの他に、「カディスの赤い星」の正体、ライバル会社太陽楽器のPRマン理沙代との恋、「全日本消費者同盟」槙村との対決、テロと、読者を飽きさせない要素がふんだんに詰まった作品である。
「スペイン」「広告業界」と、この作品後の作者の方向性がみられる作品であり、まさに直木賞に値する作品である。
本作品は、1986ミステリー・ベスト10国内部門4位にランキングされた。同年は2位に
もう一つの代表作「百舌の叫ぶ夜」がランキングされており、作者の大ブレークした一年となった。
この作品における脚本、演出は乱暴に過ぎます。荒唐無稽な精神鑑定、考えられない大病院の杜撰なセキュリティ、実際にはあり得ない警察の捜査と捕り物、脳の障害についての説得力のない解説等など。この辺りがもっと丁寧に描かれていたら優れたサスペンスに仕上がっていたかもしれません。とはいえ、まったくの失敗作かというと、そうでもないのです。ラストまでなかなか 面白く観ることが出来ましたし、それなりに評価したいのです。ですから尚更、秀作にもなっただろうに惜しいなあ、と思ってしまうのです。
この作品における脚本、演出は乱暴に過ぎます。荒唐無稽な精神鑑定、考えられない大病院の杜撰なセキュリティ、実際にはあり得ない警察の捜査と捕り物、脳の障害についての説得力のない解説等など。この辺りがもっと丁寧に描かれていたら優れたサスペンスに仕上がっていたかもしれません。とはいえ、まったくの失敗作かというと、そうでもないのです。ラストまでなかなか 面白く観ることが出来ましたし、それなりに評価したいのです。ですから尚更、秀作にもなっただろうに惜しいなあ、と思ってしまうのです。
|