物語の、その先がわかっているのに、それでも、 皆実さんがカープの勝敗を気にしたり、恋したり、 日常生活を送っている情景を見たいと思ってしまいます。 私の周りにいる、広島、長崎出身の友達は、 優しくて竹のようにしなやかな人が多いです。 皆実さんや京花ちゃんたちを見て、(七波さんも) なんとなく、彼女たちの笑顔の意味が おぼろげながら、わかったような気がします。 バリバリ戦後世代ですが、 たくさんの事を考え、学んでいるのでしょう。 「はだしのゲン」とまったく対照的ですが、 「夕凪の街」の重さが「桜の国」の救いをつくりあげているように、 「ゲン」もあって、その後この作品もあって、色々、ということで それぞれに支えあっているのかも、とも思います。 例えば、小学生などが「夕凪~」を読んだとき、淡々とした表現に 物語の意味がよくわからなかったとして。 で、 わからないなりに心のどこかにこの本がひっかかっていて、 その後、「ゲン」や「黒い雨」に初めて出会う、というのも 十分アリなのでは・・
こうの史代さんの描く古事記ということで期待して読んだけど、期待を裏切らない秀逸な出来 こうのさんの大らかな作風、漫画表現の斬新さが、古事記という題材と非常に素晴らしい化学反応を起こしている
イザナキとイザナミの国生みのシーンを始め、古事記の雰囲気を壊すことなく、斬新な表現で描いたのは見事 アマテラスのデザインも最初びっくりしたけど良い感じ(表紙の帯見たときまさかあれがアマテラスだと思わなかった) 個人的に古事記で一番好きな、イザナミが一日千人殺しイザナキがそれなら千五百の産屋を立てようというシーンも、自分の頭の中で描いていた感じとぴったりでとても嬉しかった。日本人なら本能レベルでロマンを感じるシーンだと思う
そのほか日本人なら絶対知っておくべき神エピソードの数々が豊かな表現で描かれている イザナキにしても、アマテラスにしても、スサノオにしても、神であるにも関わらず最初はみんな未熟である そこが愛おしい。多神教ならではの大らかで人間臭い神さまたち そこから成長していき、それに伴い世界も完成していき、今の世界に繋がってくる その過程が本当に豊かでユニーク
セリフなど原文で書いてあるため、とても雰囲気がある半面、最低限の古事記の知識は必要かもしれない
古事記とは大らかで、スケールでっかく、人間以上に人間らしい神さまたちが成長していき、日本という国を作っていく物語である 神話であるにも関わらず、愛らしく、身近に感じられる 古事記のある日本に生まれて本当に良かった 改めてそう思える一冊
「この世界の片隅に」から、「平凡倶楽部」を経て、なぜ「ぼおるぺん古事記」に至ったのか、三巻通して読むことで何と無く感じることができたように思えました。
こうの史代さんは、記憶の器である自分をつぶさに眺めていくことで、その周囲に恵まれた四季豊かな自然と、その国に住まわし八百万の神々の存在が感じられたのではないでしょうか。神々、自然、人間が繋がった、しなやかなうつくしさとあたたかさを感じる実験作でした。
今作の面白ポイントを一つ上げるとすれば○○○として表現された石長比売でしょうか。宗像教授シリーズではある種非常に残酷に解釈され描かれていたこの神話の重要なシーンも、こうのさんの筆(ボールペン)にかかるとこうなるとは、面白い。
いつか必ず書かれるという、続きを楽しみにしています!!
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