CMCは章ごとの密度が一般に薄い。今回もカップリング、ノーベル賞ということで、過去のCMCの原稿をかき集めた感がある。やっぱり、CMCだなと思わせる内容で、カップリングを真剣に知りたい人にはお勧めできない。ただし、値段はCMCにしては破格の値段なので、ノーベル賞をもらった気分になるには、持っていてもよいかもしれない。どうせ、真剣に勉強するなら、根岸先生編纂の2冊本のPdの本(Wiley)か、辻先生の著書、Heck先生の少し古い著書、宮坂先生編纂の219巻など、C-Cボンド形成反応の本で名著はいくつかあり、それを買うべきだ。出会った本で、化学の好き嫌いが決まることもあるので、お金を惜しまず、名著を買うべきだと、私は思う。本屋で立ち読みして、本書はがっかりした。(値段以外は) これから、もう少しまっとうな、著書が編纂されるのを待つ手もある。
そうそうたる学会をリードされてきた研究者の短編集。各章で述べられる反応自体は、現在良く目にしたり、実際に使っているものであるが、それがどういうきっかけで見出されてきたか、また、各研究者の生き方・哲学が述べられていてすごく刺激になる。読んでいて晴れ晴れする書籍だ。各章は短いながら、研究をライフワークとしてやってこられた方たちの重さを感じる。特に、企業に入り、化学という1本道から離れてしまいそうな人はぜひ読むとよい。自分が、再度化学という1本道に引き戻され、真に大切なものを見ようとする気持ちが戻ってくるかもしれない。ぜひ、買うべし。
現代科学の発見・研究成果からiPS細胞のように将来の受賞が確実視されているものも含むノーベル賞受賞及び同レベルの研究成果を50選んで紹介している本。偉業に関連する周辺の研究成果についても書かれてある。オールカラーで、写真と絵が多く掲載されている。著者はサイエンス・ジャーナリスト。時々科学雑誌に目を通しているという程度の前提知識は必要だと思われる内容である。
ノーベル賞6分野のうち理系分野は、物理学賞、化学賞、生理学医学賞の3つだが、本書では、物理、化学、生物学、生理学医学の4つの章に分類して紹介している。化学賞の中には生物学に含めた方がいいものがあるというのがその理由で、例えば下村脩氏の緑色蛍光たんぱく質(GFP)の発見などがそちらに入っている。そして、この生物学と生理学医学で全体で50あるうちの半分以上となる27個を占めている。また、直接ノーベル賞受賞者とはならなかったものの、関連研究で重要な役割を果たした日本人科学者についても多く取り上げられている。
尚、「質量の起源の発見」のヒッグス粒子についての記述は、今や少し記述を変更した方がいい状況になっている。これは日進月歩の科学を扱っている本である以上は仕方のないことではあるけれど、CERNがヒッグス粒子発見の可能性が高まったことを発表したのは2011年12月31日のことであり追加で確認が行われることもその時点で明らかだったので、もうちょっと書きようがあったかもしれない。また、ひとつ目の江崎玲於奈氏の業績の紹介のタイトルが「ダイオードの発明」となっているが、これは「エサキダイオードの発明」もしくは「トンネルダイオードの発明」とすべきである。全体的には悪くない内容なので、このような点について見直した改訂版を速やかに出してはどうかと思う。
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