帝国ホテルは今年、創業120周年を迎えたのだそうだ。高い格式を誇るけれど、もてなしの技術は最高な日本屈指のホテル。小生は、日本にバイキングをひろめたムッシュ村上料理長のファンだったので、興味を持って帝国のことをあれこれ調べたことがある。そこでこの本。迷わずに手に取った。ホテルを構成する各部門の30人の職人の仕事観や仕事振りをカラー写真とともに伝えてくれる。みなさんすばらしい職人。誇りはあるが奢りがない。360ページもある重厚な本。でもどこから読んでもよく、どのパートも読み応えがある。じわっと「日本に生まれてよかった」と感じた。伝統の力ってすごいと素直に思った。外資との競争が激しいと聞くが負けないでほしい。村松氏の筆致もよい。俵屋の不思議 (幻冬舎文庫)と比べながら再び読んでみようと思う。
どの文章(愛のある悪口)も、フンフン、ソウソウ、気持ちわかるー、そうくるか?とか、いった感覚で、とにかく面白い、世の中自分だけでは無いと妙な安心感も味わえる奥深い本です。みなさんぜひ一読を。
前の映画のリメイクというよりも完結篇と言った方がいいような内容で、よく出来た作品。主役の安さんを前回と同じ渡瀬恒彦が演じていることも、そして渡瀬が前回よりもずっと年齢をとってしまったことも、一層その思いを深くさせる。本編では、前回ミステリーのまま残されたことが明らかにされ、ハッピーエンドの感がより強い。群像劇の色彩が濃かった前作と違って、本編では主役の真弓と安さんに焦点がしぼられている。若かった真弓と安さんとの灼熱の愛と恋の輝きは消え去ったものの、50男と20歳ほども若い女房との落ち着いた愛がそこにはある。大塚寧々もそのようなわけありの女房をよく演じている。前作とまったく味わいは異なるが、佳作といってよい。前作映画と併せて、ぜひご覧いただきたいと思う。
昭和50年代、古きよき時代の東京下町の商店街を背景に繰り広げられる、屈折した男女の愛の展覧会のような作品。原作は直木賞を受賞した。それを森崎東監督が映画化し、原作を上回る名品に仕立て上げた。 主役の真弓は若くして逝った夏目雅子、彼女の白鳥の歌ともいえるすぐれた演技によって、こんなに見応えのある作品ができた。この映画のなかで、彼女は最大に美しく、華やかで、愛らしく、しかも気品があり、きりっとして光り輝いている。 夏目の大胆・鮮烈な演技と渡瀬の表面淡々としながらも愛の苦悩あふれる迫真の演技が本編最大の見所であるが、助演者もそれぞれに好演で、津川、中山、平田などさすがと思わせる。どのエピソードもおもしろい。二役としての夏目の美郷も可憐さがよくでている。 なかでも、面白いのは、盛岡の馬を飼っている旅館でのどたばた騒ぎ。津川雅彦、名古屋章、平田満の演技が光っている。 原作は短編に近い短かさで、主人公はじめ主要人物も薄墨色の背景のなかに沈んでいる。人物も映画ほどに魅力的ではない。それに対し、本編は、人物の一人一人にスポットライトをあて、鮮やかに背景のなかに浮かび上がらせた。どの人物も魅力的である。映画が原作を上回っているという所以である。夏目雅子の追悼作品としても、是非一度ご覧いただきたい。 なお、この映画の主題曲も哀愁のあるいい曲で今では伝説的歌手となったちあきなおみが歌っている。懐かしく思われるかたもあるのではなかろうか。
読んだのはもう随分前になるのですが、とても面白く読めました。なんの誇張もない、ただただアブサンへの愛情、そんな言葉もわざとらしく聞こえるような自然な関係が描かれていて、とても感動しました。ぜひ犬・猫好きな方に読んでいただきたい一冊です。
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