ハンニバル・ライジング スタンダード・エディション [DVD]
レクター・ハンニバル博士はカニバリズムを伴う反社会的人格障害者だと思われる。博士がそこに至った原因が描かれている。戦時中、逃亡兵たちに妹を食用にされ、自分もまたその肉入りスープを飲まされていたという異常体験が精神に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。そして、レディ・ムラサキとの生活。こんなところで何で日本人が出てくるのかよく分らない。日本人という設定は喜んでいいのか、悲しむべきことなのか。西洋人にはエキゾチックな印象を与えるのだろう。
「ハンニバル」ではクレンドラーに自分の脳を食わせるというショッキングな場面が有名になったが、この映画でもショッキングなシーンが目白押しだ。私は、解剖実習用の遺体を保存しているプールの中に逃亡兵の生き残りを入れて溺死させるシーンが最も印象的だった。すぐ隣に浮遊する解剖用死体。犠牲者はこのままでは自分もそうなるという恐怖に慄きながら殺された。背筋の凍るような恐怖だ。なお、解剖用遺体を浮かべる水は保存のためホルマリンを添加してあるはずである。だとすれば、目や喉などの粘膜に激しい疼痛を感じたはずだ。博士の復讐心の激しさを感じさせる。
ストーリーは前作と前後しているが全く違和感はなく、映像も美しく、きれいにまとまっている。良作と言えよう。
ハンニバル・ライジング 完全版 プレミアム・エディション [DVD]
感情をあらわにするハンニバル・レクター見れるのは、この作品だけではないでしょうか。
他の3作品では、既に人間が完成されていて淡々とし、殺人方法に芸術性すら垣間見え、常に余裕がみられるハンニバルですが、この作品では復讐という欲望の赴くままに突っ走るハンニバルが見れます。いつ失敗するのかとドキドキものです。
その結果、作品の芸術性が薄れ、ただの猟奇的な映画になってしまっているのも事実ですが。
キネマ旬報 2007年 5/1号 [雑誌]
阿部寛特集非常に良いです。最近「大帝の剣」や「アジアンタムブルー」、「トリック」などの映画や「ドラゴン桜」、「結婚できない男」などのいろんなドラマで俳優としての個性を出している
阿部寛。 彼自身の役者としての5年後、10年後がどういう個性を持った役者になるのだろうと思うと楽しみです。これからの日本映画界を背負って立つ俳優さんの一人であることは間違いないのですから。これからも映画を中心にいろんな作品での活躍を祈っています。
ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)
「書かないほうが良い」というのはトマス・ハリス自身も考えたことと思います。謎は謎のままにしておかないと、怪物でなくなってしまう。
あまり期待しないで読んだのですが、たしかにハンニバル・レクターの少年期〜青年期が描かれていて、彼が狂気に目覚める行程がある程度描かれています。
しかし本当に核の部分は相変わらず隠されたままで、読後は「結局何だったの?」という感想です。核心を知ることがなくてよかった気もするし、結局わからないならこの本の存在意義が不明だし…。単なるB級の復讐劇に終わった感は否めません。
レクター博士がどうして殺人趣味に転じたのか、ある程度の答えは前作「ハンニバル」で示唆されていたので、やはり「ライジング」はなくても良かったかもしれません。世界中のレクターファンへの、トマス・ハリスからのプレゼントだと思っておきましょう。
ハンニバル・ライジング 下巻 (新潮文庫)
ついに抑圧された記憶をとりもどし、ミーシャの復讐を誓うハンニバル。紫の上との関係
はどうなっていくのか?ケダモノを退治するのがこんなにうれしいのか?読んでると
ハンニバルの味方になってケダモノをできうる限り残酷は方法で片づけたくなります。
いつのまにやら、読者も猟奇的殺人鬼になりきってしまいます。
上下編に紫の上を通して日本趣味がかなりの分量えがかれています。
「ハンニバル」で舞台となったフィレンツェが映画と本で有名になって、ちょっとした
観光ブームがおこったときいたことがありますが、今回はハンニバル効果で日本が注目
されるのでしょうか?でも、伊達政宗の甲冑をもってはるような武家の出の方は歌は読み
はらへんような気がしますが。風景描写はしてもナンパ目的の恋文はよむかなあ?
というように日本人にとっては、ちょっとした違和感があるかもですが、まあ、メインテーマとは
あまり関係ないので、問題なしとします。
いっき読みするぐらいおもしろかったです。