このような疑問のひとつにでも、何らかの解答を与えてくれるのではないかと期待し、本書をひも解いた。しかし、残念ながら、本書は、そのような問いに解答を与えるような書ではなかったようだ。
映画「レインマン」にあらわれる場面を、著者が良く知る自閉症者と照らし 合わせて解説していく、いわば、”学術的”な映画解説といえるかもしれない。また、映画「レインマン」は、広く、自閉症者の存在を世に知らしめた功績があるが、本書では、それを映画だけでは終わらさせず、さらにもう一歩突っ込んだところに連れて行ってくれる。
しかし、どうしても、浅はかな印象だけは拭えない。自閉症者の表面をなぞっているだけで、「こころの謎」のその複雑さには、その入り口にも到達していないように思えた。これは、おそらく本書が悪いのではなく、「認知心理学」が持っている限界なのではないか?「こころ」に関しては、やはり、仏教に一日の長があると思われる。本書の著者には、ダライ・ラマと科学者の対話集である「心と生命」を一読することを薦める。
本書は、以下の方々に一読することを薦める。 - 映画「レインマン」を観た方(映画館では気づかなかった新たな発見が必ずあります) - 周りに自閉症者がいる方(彼らの世界に一歩でも近づくため)