
なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)
第二次世界大戦中の反ユダヤ主義言辞によって有罪判決を受け「呪われた作家」として生を終えたセリーヌの1936年に発表された第二長篇。前作の『夜の果てへの旅』(邦訳中公文庫)と比較すると伝記的な部分のリアリティーがよりいっそう複雑になっていて、狂騒的・妄想的な文体の過剰さからともすれば感じられるメルヘン風の枠組みが破壊されている傑作。 セリーヌの作品はフランス文学において大胆な口語表現の小説への導入が文体的に問題にされ正直言って初学者程度のフランス語能力の僕などには原書の過激さははとうてい理解不能なレヴェルにあるのだが、翻訳で水に薄めたような文章を読んでいると主題は「口語」なのではなくむしろ「書き言葉」というよりも《書くこと》そのものの痙攣的な営為にあると思える。貧民街で医師をする話者が執筆する『英雄伝』を同僚などに語りつつ、少年期を読者に語る入れ子構造(話者の名は作者と同じ「フェルディナン」という名前を持つ)を、しかしセリーヌはひたすら直線的に書いていく。それは、ボルヘスがもっとも複雑な迷宮とは直線であると言ったように、その直線性によってモニュメントとしての文学作品といった言葉思い起こさせさえするものだ。
呪詛と憤怒に彩られたセリーヌの作品は、しかし意外なまでに清浄な生の謳歌も感じられる。「文学はおとしまえをつけてくれる」と言い、「死か、嘘か」という絶望的な選択を提示しながら決して死には向かわないその強靭さが、セリーヌを盆百の「過激」で「アナーキー」な作家と隔絶する。
世紀のライブ、女神たちの競演~ディーバズ・ライブ~ [VHS]
マライア・キャリー、グロリア・エステファン、シャナイア・トゥエイン、セリーヌ・ディオン、アレサ・フランクリンという豪華な顔ぶれに、キャロル・キングがゲストに加わり、最初から最後まで聴きごたえ(見ごたえ)のあるビデオです。実力派の女性ボーカリストが揃う中で、アレサ・フランクリンが格別の迫力と存在感を示し、アレサのリードで全員が熱唱する"A Natural Woman"と “Testimony”は圧巻です。また、キャロル・キングのピアノでセリーヌ、グロリア、シャナイアが一緒に歌う"You've got a friend"も美しく、それぞれがソロで歌うヒット曲や新曲だけではなく、競演の魅力が十分に出ているライブビデオです。
VH1が音楽教育のキャンペーンのために企画した一夜限りの贅沢なライブだけあって、ファンのみならず、誰にでも楽しめる内容だと思います。
夜の果てへの旅〈下〉 (中公文庫)
澁澤龍彦氏の文章で本書を知りました。

