山桜 [DVD]
藤沢周平氏の約20頁の原作を100分足らずとはいえ品格のある1本の映画作品に昇華させた作品。原作に忠実なストーリーだが、原作のイメージを裏切らない。山桜の美しさ、その下でのかつて縁談のあった野江(田中麗奈)と手塚弥一郎(東山紀之)の出会い、その出会いを胸に秘めたまま意に添わない嫁ぎ先での嫁の役割を果たそうとするも、弥一郎の正義感あふれる行為を悪し様に言う婚家と決別し、実家に戻り、牢に閉じ込められたままの弥一郎の家を訪ねる野江の、多くを語らないが真っ直ぐ筋の通った行動。その弥一郎の家で彼の母に「待っていたのよ」と迎えられ、回り道をしたことを実感する場面は感動的だ。
山桜の季節に始まり山桜の季節に終わる構成の妙。要所で挿入される美しい自然の描写。そして何よりも控えめな田中麗奈と東山紀之の演技が素晴しい。台詞は少ないが、2人とも周囲の人を思い、誠実で、決然と行動する芯の強さを持っているが、情愛は胸に秘めたままという、古き良き日本人の倫理観・正義感・情感をよく体現している。澄明さ溢れる藤沢ワールドの見事な映画化。余韻がいつまでも心に残る。山田洋次監督の3部作の演出方法と比べてみるのも一興だろう。
小川の辺 【初回限定版】 [DVD]
「武士というものは真に難しいものだ」というセリフがあります。体面主義の武家社会を真っ向から批判することができない主人公の苦しい胸の内をよく表している言葉ですね。誅さねばならないのは正しいことをした友人。しかも彼の妻は実の妹。出来るならばやりたくないが、命令には逆らえない...。
本来戦いたくない相手にやむを得ず刀を向けるという構図は、ありがちなパターンですが、本作では戦いたくない相手が親友と妹と2人もいて、武家社会の理不尽を二重構造で描いています。そこに、ひそかに田鶴を慕う新蔵という若者を配して、ひとひねりしたのがいい。武士ではない新蔵の価値観が入り込むことによって、先が読めなくなっている。ただ、悪役(?)の描き込みが浅いので、ストーリー全体が平坦な印象なのが惜しい。
東山の立ち振る舞い、正座してただ黙って眼を閉じる横顔、武士としての凛々しさが際立ち、とても良いのですが、妹の田鶴役がどう考えても、ミスキャスト。立ち振る舞いも、セリフ回しも、あの時代の女性に見えません。反対に、片岡愛之助は、出演場面少なく勿体無いと感じました。
朔之助と新蔵がたどる山形から行徳までの旅は、ある種ロードムービーなのだけれど、道中の緑深い森や山・澄んだ川といった豊かな自然を背景に語られるシーンが美しい。ただ、その道行きの中で、過去の出来事、それぞれの立場いきさつが詳らかになるというストーリー展開は悪くないのですが、途中でほとんどハプニングが起きないのが物足りない。何らかのトラブルに巻き込まれるうちに朔之助が抱えていた秘密や、新蔵の朔之助に対する歪んだ気持ちが明らかになっていくなどの工夫がほしかったところ。風景や簪(かんざし)など小道具からの連想では少々弱い気がします。
朔之助の「ゆっくり参ろう」とのセリフは、佐久間を捜し出すまでの“道行き”でもあり、近づくことは、どちらかの死に、近づくことでもあります。少しでも、先延ばしにしたい...その想いは、季節を遅らせるかのように実家の木は花を咲かせない。このあたりの描写は少々ベタではありますが、祈りを託された花は、家族たちの想いとともに、ラストシーンに呼応していくことに。
ラスト、本作のタイトル『小川の辺』というのは、『心の岸辺』でもあったことが明らかになります。原作未読の私には、意外な展開で、良かったと思います。
アクチュール・ステージ (キネ旬ムック)
インタビューが掲載されていたので購入しました。 でも他の方々のインタビューも読みごたえがあってよかったです。 ただ値段が1200円というのは高すぎます。せめて980円とか1000円出してお釣りがくる値段にして欲しいです。 まぁ、いま旬の若手俳優さんからベテラン俳優さんまで幅広い方々の貴重なインタビューなので(そうでなくともヤスケンさんが載っているので)大事に保存しておこうと思います。 20頁にわたる向井理さんのロングインタビューはファン必見ですよ!! でもくどいようですが私はヤスケンさん目当てで購入しましたf^_^;