チェンバロ フォルテピアノ
ふしぎな本である。
大量の図版や極めて詳細な楽器に関する記述等々、資料性の高さは随一のものである。特に、楽器の構造を記したイラストは、詳細かつ見やすいもので、楽器の構造を理解する糸口としては、本当に助かる。
そのような資料性の高さはもちろんのことだが、この本の終わりにフルトヴェングラーが登場するように、音楽家としてどのように歴史的楽器を演奏すべきか、という演奏論のベクトルも強く刻まれている。
そのような学究的な視点と芸術家としての視点がクロスしたこの本は、一見矛盾するかのような、その二つのベクトルの交差によって、却って歴史的楽器のありざまを、読者にわかりやすく提示していることに貢献していないだろうか。分厚いボリュームにも関わらず、最後まですらすらと、そして興奮を伴って読了してしまった身には、そのような奇跡的な出会いがあったとしか思えないのだ。
J. S. バッハ:イギリス組曲 [チェンバロの歴史と名器3]
チェンバロの音というと眠くなりそうという印象を抱きがちですが
ルッカース1624年のチェンバロは、18世紀の物と異なり爪が頑丈で
弦を強く弾きます。
そのため非常にエネルギッシュな、躍動感に溢れるイギリス組曲と
なっていますが、荒々しさを秘めていても粗さは全く感じられず、
かつ古くささも全く感じないのはさすが希代の名器。
何も知らない人が聞けばシンプルに音の美しさを感じ、
少し知ってる人ならチェンバロからこうも華やかな音が出る事に驚き、
詳しい人なら第4番プレリュードの分析トラックを聞きながら
ライナーノーツの解説を読み、奥の深さに唸ることでしょう。
選曲も演奏も録音も解説も、納得の一品です。この中身でこの値段は
はっきり言ってお得。
ただ一つ、ここまでやってSACDハイブリッドでない点だけが
画竜点睛を欠いてる気がしてならないので苦渋の☆マイナス1です。
ピアノはいつピアノになったか? (阪大リーブル001)【CD付】
ピアノの歴史を有名な作曲家の歴史とともに解説している。最終章でピアノロボットについても言及しているあたりが真面目な本だと思った。クラシックファンのみならずテクノロジーに興味を持っている人にもおすすめです。