ブルーノート派リスナーで、アマチュアドラマーの僕にとって、サド・ジョーンズは、かのエルヴィン・ジョーンズのお兄さんだというくらいの認識で、実はほとんど音を聴いたことがなかった。いや、ハンコックの超名盤「スピーク・ライク・ア・チャイルド」でフリューゲルホーンを吹いているのが彼か・・・。だが、リーダー作は、ブルーノートに数枚だっけか?今までどれも未聴だった。で、「鳩のサド」で有名なジャケのコレを聴いてみた。うーむ、最初の印象では、ずばり「地味」。しかし聴けば聴きこむほど、むしろ「滋味」。いや、タイトルの「壮大な、壮麗な」というイメージとは、少し第一印象が違う。この時代の他のブルーノート諸作とも、ビ・バップともファンキーともハードバップとも違い、かといって白人ジャズとも明らかに違う雰囲気。自然に背筋が伸びる端正なジャズ。あるいは「器が大きい」ジャズと表現すべきか。とにかく、テクニックや速吹きや斬新さを競う感じは全くない。聴き手に媚びる売れ線要素もいっさい入れない。熱気や激しさはないが、ムーディともお洒落とも形容し難い。知性と品格が自然に香気のようにただよう。「April in Paris」が名演と名高いが、個人的には、「If I Love Again」のややアップテンポでも風格あるプレイが好きだ。ドラム・シンバルの硬質で端正な刻みと音色も、この音楽性にぴったり。楽器は違うが、近い空気を持ったミュージシャンなら、デューク・ジョーダンを想起した。真面目だが堅苦しくなく、硬派だがとっつきにくさはなく、壮大だが派手ではなく、センスは良いが売れ線ではなく、ノリは良いが軽薄ではない。「マグニフィセント」とは、なかなか的確に表現したタイトルだと思う。 ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ 関連情報
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