神尾真由子さん表紙のストリングスがあったことにまず感激! 中古とはいえ新品同様で、プレミア価格も惜しくありません。
子供が、バイオリンを習っているので、演奏フォーム等を参考にしようと思い、購入しましたが、入門者には不向きでした。むしろ、詳しい方、ある程度、知識のある方にとっては、過去の偉大な演奏家達の姿は、勉強になることでしょう。それまで、DVD庫の中で眠らせておかなければなりません。しかしながら!完全にマニュアル化された現代の音楽教室での、習う、というやり方の以前には、本来、このような自由な、それでいて、素晴らしい演奏があったのだ、これこそが、理想的な芸術の姿であろう、と考えさせられます。お手本をコピーするというやり方に、疑問を感じる私にとって、それも練習の上では必要でしょうけれど、そういう意味では、出会って良かったのかもしれません。言葉と楽器の演奏が同じだってったって、話し方にも、人それぞれあって、皆がアナウンサーのような喋りをする訳ではないでしょう。ニュースを読み上げるのが、素晴らしい話し方か、って、それはちょっと違うように、演奏もね、誰にも習わずにただ好きでやってたっていうような、個性豊かな昔の方が、偉大な演奏家が生まれたようですね。それと、今まで、CDの演奏しか聴いたことがなかった海外の演奏家たちのトーク、話す姿が入っていたので、その人となりを拝見できて、それも良かったでしょう。ショービジネスの犠牲になった若き演奏家達の話は、やるせないですね。芸術を理解しない人達のすることです。必須ではありませんでしたが、あっても良い1冊だと、私には言えます。
ひさびさに感動した一枚です。 目がうるうるしたくらいです。 バイオリン協奏曲と言えばベートーベン、メンデルスゾーン、ブラームス、そしてチャイコフスキーというのが個人的な順番なのだが、このチャイコフスキーを聞くとその順番が変わってしまうほど、今までのイメージを一新してしまう演奏です なぜそんなに感動したか? むろん彼女のそしてオーケストラの演奏も素晴らしかったのだが、録音技術の素晴らしさも光った一枚のように思います。 いくらハイフェッツが素晴らしくてもテレビで言えば白黒の世界 聞き手はどこかで音の限界に甘んじている。
それに比べ、このフルハイビジョンの世界で演奏する彼女の演奏はどんな制約も受けずに、音の広がりを無限に表現している。 単に音がいいだけではなく、すべてのバランスが計算されつくしており、ある意味生演奏でも聞けないくらいバランスの良さを実現している 今後彼女のCDは全部購入しようと思います。 決して後悔させない演奏をしてくれるに違いない。 そういう予感を持たせる一枚でした。
ただ、あまりに鋭角な演奏なので聴くときには体調を万全にしないと確かに疲れるかもしれません。 私自身、体調のいい時はハイフェッツ、疲れているときはシェリングと聞き分けています。
26歳という年齢が信じられないほどの円熟味が感じられました。
最初のフランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」の伸びやかで艶やかな音色に魅了されることでしょう。チャイコフスキー国際コンクールでの優勝から5年の歳月が流れたのを実感する成熟ぶりにまず驚きました。 レガートの美しさ、高音の煌めき、息の長いフレーズ作り、そして最弱音から強音までのダイナミックレンジの幅広さ、どれをとっても1級品で、若くして大家の雰囲気が漂っているのは成長の証でしょう。 第1楽章は彼女の端正な演奏を聴かせてもらいました。 第2楽章の情熱的なフレーズの表現は彼女の魅力を如何なく発揮しており、楽々と弾きこなしています。
ピアノ伴奏のミロスラフ・クルティシェフは、どのようにでも表現できる多彩さと大きな包容力を感じさせるピアニストでした。神尾真由子と同様に、2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクールで最高位に入賞したという実力を知ったのですが、ヴィルトオーゾと言えるヴァイオリンとピアノの応酬が心地よく響きます。収録時は27歳で、この若い2人の魅力的な達人たちによる日本でのコンサート・ツアーは実に素敵な演奏会だったことでしょう。
ブラームスも悪くはありませんが、少し渋い選曲だと思いました。ロマンティックな演奏でしたが、彼女の持ち味であるもう少しケレン味たっぷりな演奏を期待しました。表現力の大きさと激しさが彼女の特質でしょうから。
圧巻はR.シュトラウスの第3楽章でした。彼女の本来持っているダイナミックさと才能の煌めきが詰まっています。実に挑戦的で、意欲的でした。重厚感はミロスラフ・クルティシェフの支えが功を奏し、音の幅が違います。 音が飛び交うような技巧的な箇所や、早いパッセージは、神尾真由子の名刺代わりの演奏と言えるでしょう。録音(2012年8月30日〜9月3日)状態も良く、音の粒立ちは申し分なく、ダイナミックレンジも相当なものでした。4分前後から演奏は佳境に入ります。彼女の何かに挑むかのような奏法の迫力はリスナーを虜にすることでしょう。
6分を越えると大団円に向けて、ピアノもヴァイオリンも火を噴いたような激しさで迫ってきます。決して我を忘れてという境地ではなく、空中分解寸前の激しさのような際どさが実に魅力的に映りました。
才能の煌めきは最初の1音を聴くだけで感じました。 チャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子ですが、これがデビューアルバムだというのにも驚かされます。選曲は意欲的ですし、演奏は挑戦的です。技巧的な箇所、特に早いパッセージの音の粒立ちは申し分なく、ダイナミックレンジも相当なものでした。多彩な表現力をリスナーに分かってもらえるような演奏ですし、このプログラムは彼女の特徴や音色の個性がくっきりと浮かび上がるよう意識して構成されているのが如実に分かりました。
フランツ・ワックスマンの「カルメン幻想曲」は、何かに挑むかのような音が飛び交っています。カルメンの情熱そのものが音の塊となって押し寄せてきました。一瞬の緊張感をもたらしますが、逆にここまでケレン味たっぷりに弾かれるとかえってリラックスして感じ取ればと、開き直れました。収録時に21歳という年齢が信じられないほどの熟練の技を聴かせてくれます。
チャイコフスキーの「ワルツ・スケルツォ」「瞑想曲『なつかしい土地の想い出』より第1曲」はコンクールで弾いたものですから、その時の再演のようなものですし、シマノフスキの「神話」、ショーソンの「詩曲」は、激しくテクニカルな神尾真由子ではない抒情的で神秘的な一面を表す演奏でした。 ストラヴィンスキー「イタリア組曲」は、神尾真由子の端正な演奏を聴かせてもらいました。受け止めるヴァディム・グラドコフのピアノが丁寧でしっかりとサポートしていることもあり、落ち着いた演奏になったのだと感じました。中間部の激しい箇所は難しい演奏なのでしょうが、楽々と弾きこなしています。 なお、伊熊よし子さんの4ページに渡る解説は丁寧で詳しいものでした。神尾真由子の人となりを知る上でも大変参考になりました。
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