１９６６年に来日したコルトレーンのステージを収録したライブ盤。とにかく「凄い」のひとことである。まずは演奏時間。もっとも短い"Peace On Earth"でも２５分、再長尺の"My Favorite Things"に至っては５７分である。湧き出るアイディアを惜しみなく表現し続けた結果これだけの時間になったのだろうか。それにしても驚くべきバイタリティだ。咆哮しまくるコルトレーンとファラオはもちろんだが、リズムセクション（というのが適切かもわからないが）の３人は延々とそれぞれの楽器を演奏しっぱなしである。並みの体力では続かない。特に女性であるアリスにとってきつくなかったのだろうかという、余計な考えが浮かんでくる。そして演奏内容だが、まさに圧巻である。コルトレーンのソプラノで始まる"Afro Blue"から十八番中の十八番"My Favorite Things"に至るまで神がかり的なインプロビゼーションの連続だ。フリージャズではあるが、決してめちゃくちゃに演っているわけではない。コルトレーンの吹くテーマの美しさは比類ないものだ。対極的なスタイルのファラオのプレイは端的に言って難解ではあるが、その表現力の広さには感服させられる。個人的な好みでひとつ難点を挙げると、"Crescent"と"My Favorite Things"での冒頭のジミー・ギャリソンのベースソロだ。いくらなんでも１３分、１５分は長い。無伴奏のベースをこれだけ聴いていると飽きてくる。ここは「LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN」でベースソロを"Introduction to My Favorite Things"として別トラックにしていたのと同じにして欲しかった。故にそこだけ☆ひとつマイナスとさせてもらった。まあ値段もそんなに安くはないし、これだけ長尺のフリージャズは聴く時間を確保するのも大変だが、コルトレーンが好きでたまらない人には購入して聴きまくることをお勧めする（とはいえ、熱烈なファンの方々は既に持っているでしょうけど）。マイルス・デイヴィスの「Agarta」のライナーノーツに「このLP（CD)は住宅事情の許す限り大音量でお聴きください」という一節が書かれていたが、本作も同様だ。集合住宅に住む私の場合、車の中以外にはそれができる場所はない。自宅でフルボリュームでこれを聴いたら、相当な苦情が来るだろう。
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