五島良子は他を圧倒する透明感のある声を持ちながら、なかなか報われずに長い長いキャリアを過ごしてきました。
その声をどう武器にするか、悩んだようで、アイドル風だったり、ポップ系だったり、さらにはソウル風になったり、曲調、歌い方もアルバムごとに変化しています。
しかし、ネスカフェのCMソング「OPEN UP」で大きな注目を浴び、ようやく報われた気がします。
このベスト盤を聴くと、彼女のただならぬ歌唱力と、声の魅力がよくわかるでしょう。
彼女のことが気になった方はまずこのベストを聴いて、「RONNIE」が気に入ればアルバム「シアンの羽根」、カバー曲「LOVIN’ YOU」が気に入ればカバーアルバム「NOW AND FOREVER #2」を聴く、という風に進んでもらえるとうれしいです。
あえて言えば、「OPEN UP」は、「ネースカフェー」っていう商品名のところを別の歌詞にして歌って欲しかった。いい曲だけに、ちょっと残念。
しっとりとしているけど、どこか抜けがいい彼女の透明感のある歌声は、こういう洋楽バラードを歌うとさらに際だちます。
たとえるなら、冷えすぎていないジャスミンティーのよう。
すっと体に入って、じわじわっと心が落ち着きます。
このCDが気に入った方は、ぜひSAKURAの「ROOM508」という洋楽カバーアルバムも聴いてみて下さい。オススメです。
それまでのソニーからポリスターに移籍して初めてだしたアルバム。このアルバムが出るまで長い沈黙があり、一体どうしたんだろうと思っていたら、「ホントにどうなってしまったんだ!」というサウンドとルックスで戻って来たのが強烈な印象として残っています。
それまでのどちらかというと透明感ある「可愛らしい」歌声とは別人のような、情念こもった絞り出すR&Bヴォーカルの攻撃に最初は違和感を覚えました。私が五島良子のアルバムに求めていた世界とあまりにかけ離れていたからです。
だが聴き込むにつれ、これはとてつもない傑作なのではないかと思えるようになりました。
とくに最終曲の「名もないピアス」はそれ以前の五島にも以後の五島にもない、凄絶に美しい名曲です。切り裂かれた心が最期にたどりついた安らぎ、それがこの「名もないピアス」には表現されています。
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