面白く読み終えましたが、読後感は悪いです。しかし暗い作品だからというだけではないように感じました。
まずどうしても、人間こんなに病むものかなぁという感想を持ってしまいます。 兄弟を死ぬほど嫌っていたり、生まれた由来は何にしろ幼い子供に対していっそいなければいいと考えたり。 いや、それを言うと犯罪小説の動機全てに言えることなので無しだろ、とお思いでしょうが、全員にそういった黒い面があることが明らかになるにつれ、うんざりしてしまうのです。 愛憎渦巻いた結果とはいえ、全員タガが外れすぎと感じてしまう。真人間がいないじゃないか、いや誰しも狂気を持っているのが人間なのか、と戸惑うのも作者の思惑通り? なのでサイコサスペンスやホラーとも言えるのではないでしょうか。
ミステリとしては、全員の考えと行動が明らかになると事件当日の謎が解けるしっかりとしたもの。 さらに、事件後それぞれの人物がそれぞれの推理によって行動したことが、他の人物に影響を及ぼす整合性、何度もどんでん返しを味わわされる構成は見事です。
結論として、非常に良く出来たミステリを読んだという満足感と、それを構築するために生み出されたモンスター化したキャラクタへの違和感がないまぜになって、 この読後感の悪さが生まれたのだと思います。 特に、"誰もが求める肉体だけが取り柄の悪意に満ちた女"というキャラの造形に、フィクション感を一層強く感じさせられてしまいました。
丁寧なドラマでした。
8年前に幼子を残し出て行った前妻と再会します。 互いに人生の岐路を迎えています。
・前妻との再開 ・おもちゃやから次ぎの仕事への踏ん切り ・前妻の結婚
新しい人生に踏み出すために、忘れられない過去としっかり決着をつけていく という話なのですが、 たんたんと進んでいくんです。特に大きな展開や仕掛けもなく、丁寧に丁寧に、、、、。 渡辺真起子さんの演技がすばらしく、ついつい最後まで見てしまいました。 映像は低予算映画らしく、昼のドラマのようにちゃちいところ満載ですが、 渡辺さんのしぐさや表情がこの映画全体に安心感を与えてくれています。 また、内田量子さんもほとんど不機嫌そうにしているのですが、子供と手をつなぐシーンの笑顔は 最高です。このシーンの為にこれまでの演技を伏線にしていると思わせます。
個人的には、設定をもう少し過去の時代にしてほしかった。おもちゃやの寂れ感がやや弱いので。 また、シーンに合わせた音楽をもう少しつけてもらえると、もっと楽に見続けられると思いました。
異国映画みたいな馬鹿みたいじゃないバイオレンスな感じがよかったです 終幕の音楽はちょっと狙い過ぎてうざかったですけどね。
筋道は適当ですが出てくるキャラが思った以上に必然性があって良し! 屑のごろつき、兄、爺、ビッチ、チンピラ警察に愛情湧きまくり
何より刺青エロすぎです、絵はアレでしたが 刺青フェチとしては刺青シーンへの入れ込み具合が最高に感じられました。
気を抜かずに、でも気を使わずに本編全部楽しく見れました怪作です。間違いなく。
ドラマからこの作品を知ったことはもちろんだが、 そんなきっかけからすばらしい作家にめぐりあえるのも読書の醍醐味。 男性作家ですばらしい恋愛を描く人は大勢いる中で、この人は少し位置が違うと思う。 女性に負けない感受性で圧倒させられる作品が多い中、 彼のもつ繊細さは男ならではの視点だ。 女性の繊細さと男性のナイーブ感が少しちがうことは想像できることだが、彼の作品はそんな事柄を思い出させてくれる不思議な魅力がある。 「短編こそ作家の器量が現れる」というのはよく聞く話だが、表題作『恋文』は短編ながら存在感が逸脱している。もちろん出来事はあなたの家でも十分に起こる可能性がある世界なのに、読み終えたあと、涙が止まらない・・・!一つ一つの言葉を大切に読み返したくなる作品ばかり。
今はなき探偵小説専門誌「幻影城」に連載された花葬シリーズを中心にまとめられた短編集。時代性の活写・情景描写の美しさと人間の情念の深さをみごとなまでに凝縮している。この作家の他の作品にありがちな極端なトリッキー性も薄く、直木賞受賞作「恋文」への道程を示す作品ともいえるだろう。 個人的には「六花の印」が一押し。思わず目頭があつくなる佳品である。
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