前回の「TIDAL」は内気で聡明な少女の孤独な日記という趣きを持ったアルバムであった。 今回のアルバムは音が前回より聞きやすいのでFIONAを初めて聞く方にお薦めできる。 もちろん前作と同じFIONAの重みのあるハスキーヴォイスはは素晴らしいがこのアルバムで彼女は表現をするという余裕がでてきたように感じる。 はかなげな少女ではなく「強い大人の女性」へとしっかり変化している姿に初期の頃からのファンとしては感動的です。 彼女はおそらくとても自分に厳しい女性なのだろう。だから,しっかり成長する。 今回のアルバムもすべての曲が素晴らしいし,その詞もあいかわらず厳しく美しい仕上がりになっています。
前作からなんと7年も経ってしまった。 1996年にデビューして以来、ポップミュージシャンとしてはあまりに異色の言動を繰り返してきたFiona Appleの4thアルバム。 間違いなく今年度のベストアルバム級。個人的には歴代のバロックポップ、アートロック系統のアルバムの中でも五指に入る傑作だと思う。
「When The Pawn」ほどではないにしろやはり過剰に長いタイトルや(正式タイトルは「The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do」)、 醜悪な人の顔のようにも見えるジャケットは、まるでリスナーを威圧するかのような強烈な個性を放っている。 もう第一印象からして、今までの彼女とは明らかに一味違う。 しかし中身はさらに凄まじい。
最初に驚かされるのはそのサウンド。 総じて非常にシンプルですが、その一つ一つが素晴らしく印象深い。 飾り気の少ないピアノの反復は彼女の歌をより引き立てることに成功しているし、 アルバム中盤の、やや大人しめのジャズのようなドラミングもいびつで特徴的。 中でも特に驚かされたのはフィールドレコーディング(実際に録音しているのか、 そこらへんの音源集から拾ってきただけなのか、それとも映画や曲からサンプリングしているのかはちょっとわかりませんが)。 例えば、7曲目「Periphery」では、砂を踏みつけるようなジャリジャリという音が最後まで一心不乱にリズムを刻み続け、 6曲目「Werewolf」では、子供の奇声のような甲高い音がバックで流れる。 誰もがどこかで実際に聞いたことがあるであろうありふれた音が、懐かしいような、それでいて少しおどろおどろしいような感覚を与えてくる。 楽器と録音の組み合わせにより表現される、日常感の漂う物悲しさは本当に面白い。 10年前には既にGodspeed You! Black Emperorやweg、The Books、Boards of Canadaらが実践していたことではありますが、 彼らの曲では色々な種類のサンプルがめまぐるしく入れ替わったり、あるいは複雑で長いサンプルが多く用いられたのに対し、 このアルバムは短いサンプルの反復が多い。 ひたすらシンプルなサウンドにこだわった今作ならではの試み。 前述した「Periphery」のラストは特に心に残った。
それと相変わらずのことですが歌唱力は見事。 たとえ英語がわからなくても、彼女の強烈な感情が否が応でも耳に入り込んでくる。 個人的には一曲目「Every Single Night」の震えるような歌声と、ラストトラック「Hot Knife」のコーラスが好み。 子供の頃、車の中でよく親に聞かされていたイギリスの少しグロテスクな童謡を思い出して、何となくノスタルジックな気分になった。
今までは良くも悪くも普通のポピュラーミュージックの域を出ていなかった部分が多くあったように思いますが、今作では何か吹っ切れた印象。 聞きやすいメロディーだとか荘厳な楽器だとかに拘っていると表現できない域の感情を、ついに表現できたのでは。 その点万人受けする作品ではありませんが、かといって決して聞きづらい作品ではありません。 歌とピアノは本当に美しいし、そして何より、これほど生々しく、痛々しい感情が伝わってくるアルバムはそうそうあるものではないと思います。
前作からなんと7年も経ってしまった。 1996年にデビューして以来、ポップミュージシャンとしてはあまりに異色の言動を繰り返してきたFiona Appleの4thアルバム。 間違いなく今年度のベストアルバム級。個人的には歴代のバロックポップ、アートロック系統のアルバムの中でも五指に入る傑作だと思う。
「When The Pawn」ほどではないにしろやはり過剰に長いタイトルや(正式タイトルは「The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do」)、 醜悪な人の顔のようにも見えるジャケットは、まるでリスナーを威圧するかのような強烈な個性を放っている。 もう第一印象からして、今までの彼女とは明らかに一味違う。 しかし中身はさらに凄まじい。
最初に驚かされるのはそのサウンド。 総じて非常にシンプルですが、その一つ一つが素晴らしく印象深い。 飾り気の少ないピアノの反復は彼女の歌をより引き立てることに成功しているし、 アルバム中盤の、やや大人しめのジャズのようなドラミングもいびつで特徴的。 中でも特に驚かされたのはフィールドレコーディング(実際に録音しているのか、 そこらへんの音源集から拾ってきただけなのか、それとも映画や曲からサンプリングしているのかはちょっとわかりませんが)。 例えば、7曲目「Periphery」では、砂を踏みつけるようなジャリジャリという音が最後まで一心不乱にリズムを刻み続け、 6曲目「Werewolf」では、子供の奇声のような甲高い音がバックで流れる。 誰もがどこかで実際に聞いたことがあるであろうありふれた音が、懐かしいような、それでいて少しおどろおどろしいような感覚を与えてくる。 楽器と録音の組み合わせにより表現される、日常感の漂う物悲しさは本当に面白い。 10年前には既にGodspeed You! Black Emperorやweg、The Books、Boards of Canadaらが実践していたことではありますが、 彼らの曲では色々な種類のサンプルがめまぐるしく入れ替わったり、あるいは複雑で長いサンプルが多く用いられたのに対し、 このアルバムは短いサンプルの反復が多い。 ひたすらシンプルなサウンドにこだわった今作ならではの試み。 前述した「Periphery」のラストは特に心に残った。
それと相変わらずのことですが歌唱力は見事。 たとえ英語がわからなくても、彼女の強烈な感情が否が応でも耳に入り込んでくる。 個人的には一曲目「Every Single Night」の震えるような歌声と、ラストトラック「Hot Knife」のコーラスが好み。 子供の頃、車の中でよく親に聞かされていたイギリスの少しグロテスクな童謡を思い出して、何となくノスタルジックな気分になった。
今までは良くも悪くも普通のポピュラーミュージックの域を出ていなかった部分が多くあったように思いますが、今作では何か吹っ切れた印象。 聞きやすいメロディーだとか荘厳な楽器だとかに拘っていると表現できない域の感情を、ついに表現できたのでは。 その点万人受けする作品ではありませんが、かといって決して聞きづらい作品ではありません。 歌とピアノは本当に美しいし、そして何より、これほど生々しく、痛々しい感情が伝わってくるアルバムはそうそうあるものではないと思います。
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