(1)横浜ホンキー・トンク・ブルース (2)レイジー・レディー・ブルース (3)ブルースで死にな (4)センチメンタル・ボクサー (5)わんすもあぽーず (6)待ち呆けのブルース (7)ディア・ミスター・ブルース (8)アイ・ソー・ブルース (9)石榴 (10)ブルーノート・ソウル(哀愁のブルーノート)
1982年に刊行された本の復刻版ということで、40代を迎えられた時期の、原田芳雄さんの肉声が詰まっています。 この頃の原田さんは、ただの俳優というよりも、最先端のファッションリーダーに祭り上げられているイメージが強く、この本にも、あの時代の空気が漂っています。ただ、1980年代になると、原田さんがそれまで醸し出していた「遊び」の空気がそのまま時代の空気となり、ご本人を追い越して行ったような印象があります。 しかし原田さんは、時代のリーダーを気取ってみたり時代に呑みこまれたりすることなく、潔く脇役に回られ、おそらくお若い頃に舞台で培った演技力で、俳優として確固たる地位を築かれました。それについて、何か思うところもおありだったのではないでしょうか。ご発言が残されているのならば、今度はそれもまとめて、出版していただきたいものです。 1990年代以降、50代60代と円熟されてきた原田さんが、70代以降にどんな老人像を見せてくれるのか楽しみにしていただけに、亡くなられたことはつくづく残念です。
ところで、私にとって「俳優・原田芳雄」といえば、テレビ「木枯し紋次郎・峠に哭いた甲州路」(1972年)での、悪ガキだったがために片腕を斬られて村から追い出され、盗賊の頭目となって復讐のために村に戻ってくる若者であったり、テレビドラマ「真夜中の警視」(1973年)での、薄汚い革ジャンの事件屋だったりが初めての出会いだったのですが、この2作品とも、153ページのテレビグラフィに載っておりません。 「真夜中の警視」については、日本テレビドラマデータベースによると、「撮影のため無免許で自動車を運転し事故を起こしたため7回で打ち切り」とのことですが、そのためでしょうか。もういいんじゃないの、載せても? 「峠に哭いた甲州路」は、「木枯し紋次郎」の中でも最高傑作ですよ。なぜ載せないんだ?この物語を拡大して映画化した「夕映えに明日は消えた」(1973年)は、フィルモグラフィには記載されていますが、未公開のままです。わざわざ公開せんでもいいから、DVD化はしてもらいたいですね。
刑事ドラマ、テレビドラマファン必見の傑作である。ジーパンでジープを乗り回すハミだし刑事を原田芳雄が好演、というか完全に当り役。ドンパチ、爆破、カーアクション・カースタント等アクションドラマとしても見応えがあり、面白い。何しろオープニングはいきなりジープがパトカーを猛スピードで追い越す映像から始るのでインパクト十分! キャストも芸達者な、しかも通好みな役者を揃え、楽しませてくれる。特に第1話は、神田隆、今井健二、上野山功一といった有名悪役が勢ぞろい、堂に入った悪党振りを見せてくれる。また、左朴全や高木均などチョイ役でもいい味をかもし出す脇役も忘れてはいけない。しかし、何と言っても原田芳雄の若さ、かっこよさ、これに尽きる! 『太陽にほえろ!』のマカロニもジープに乗っていたが、マカロニと比較するとどうしてもマカロニは青臭い子供に見えてしまう。新宿が舞台なので、新宿を「ジュク」と呼ぶ呼び方もいい。 こんな素晴らしい作品が今まで日の目を見なかったとは…。隠れた刑事ドラマの傑作を是非貴方の手元に置いていただきたい。
この人ホントに歌が上手い。ブルースってなかなか聴かせるのは難しいと思うけれど、ホント原田さんの歌は味があるよ。過去のアルバムも再発して欲しいな。特にB級パラダイスのライブなんか最高なんだけれどなあ。それにしても阿木曜子さんてすごい詩を書くよね。
原田芳雄さんのBirhday liveを切り取った写真集が、没後上梓された。 写真集の中で、芳雄さんが唄って踊って、あの野太くってそれでいてシャイで繊細な声で、ジョーク言ってるのが聞こえてきそうな、そんな本だ。 いい本だ。作った人の愛に満ちている。
それで思い立って、自宅で、カセットテープから『原田芳雄LIVE』(1982)(原盤は2枚組のLPでCD化されていない)をデジタルに変換して聴いている。 その中で、たとえば、 『春は嫌だねしんと寒いよ、誰かいるなら電話をくれよ・・』(『ブルースで死にな』)と芳雄さんは歌っている。
昨日は午前中は土砂降りの雨だった。 その大雨で、あんなにも咲き誇っていた桜は一瞬にして散ったという話だ。
本の最後に、原田家の桜の写真が写っている。 桜の横にはニットキャップをかぶった芳雄さんが座っている。 今年、その桜の横にはもう芳雄さんはいないんだと思った。それがリアル。
いろんなことがあってそれは過去になってゆく。でも過去に埋没させてはいけないこともたくさんある。
桜の花は来年も花を咲かせるだろう。芳雄さんがいなくっても、自分がこの世から消え去っても。
原田さんの音源がいろいろ復刻されて、例えばこの写真集を見ながら、バーボン傍らにして音楽聴いて、それらを肴に桜を愛でることができたら至福だと・・思わないかい?
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