確かCDの帯かどこかに書いてあった宣伝文句
<ジャンルは「フィオナ・アップル」>
まさしく、その通りだと思います。
数年前に彼女が来日したときコンサートに行ったのですが、あんなに緊張感のあるコンサートは知らない。鼻血出るかと思った。
今までとはまったく違う世界観と思います。アレンジはシンプルですが、トム・ウエイツっぽい感じもあります。
寡作なフィオナが7年ぶりにリリースした4th作。今回は、プロデューサーにドラム&ベース奏者であるチャーリー・ドレイトンという人を起用したせいか、全体的にパーカッシヴな側面がこれまで以上に強調された作品になっているように思う。様々なSEなどを駆使しつつ、時にエスニックに展開されることもある楽曲アレンジは、かなり実験性を帯びたものになっていると言えるだろう。反面、アコピを前面に押し出した演奏スタイルは、全作品中最もシンプルなものとなっており、前作のような、言えば賑々しい部分は皆無だ。エレクトロニクスの導入についても、これを可能な限り排除し、極めてアナログ的風合いを重視しつつ制作されているように思う。余計なギミックは殆どない。曲作りについてはジャジーな印象が強く残る。ポップ/ロックな色合いはかなり薄められ、全体的に、極めて格調高い作風となっている。音楽的前衛性が高いと言ってもいいような作品であると思う。が、とにかく本作で強調したいのが、フィオナのシンガーとしての素晴らしさだ。ややルー・リード的アンニュイ感を取り入れたためか、前作においての彼女のヴォーカルスタイルは、ヴォーカル・アルバムとしてはやや物足りない作品だったように思っていたのだが、今作における彼女の歌声は、まさに非の打ちどころがない秀逸さを余すところなく我々に伝えてくれるものとなっている。スキル、表現力等完璧で、改めて彼女の天才ぶりを再認識させられた。7年という長期ブランクを埋めるに値する、秀逸な作品になっていると思う。しかしながら、個人的には、やや地味に感じられたというのが、正直なところ。過去作には、必ずと言っていいほど、印象度の高い楽曲が何曲かは入っていたのだが、本作にはそういった押しの強さを有する曲が無いように感じられてしまったのだ。曲作りが、比較的感覚的に、あるいは即興的に行われているような感じがして、フックが足りないように思えてしまったのだ。あるいは、方向性として、最初の方でも記した通り、やや実験的、前衛的な部分を意識した風でもあり、一音楽家としてのレベルアップというものを、ジャンルを超えて目指した作品であるのかなというようにも感じさせられた。要は、僕にとっては、やや難解な作りのアルバムになっていたということなんだろうと思う。この音世界にグイグイ引き込まれてはいくのだが、3作目までのような強力な吸引力はない。・・・勿論嫌いではないが、個人的には少し物足りない作品でした。
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