大好きな藤沢さんの、時代小説短編集。 各編に「秘剣」とされる剣技名のタイトルをあてていて、それぞれの主人公にぴったりとはまっています。 共感できるのは、主人公たちが皆、サムライ然としているわけでなく、普通の男に見えるところかもしれない。臆病でだらしなく、浮気者で偏屈。昔伝授された秘剣を忘れ去ってしまった者だっている。だけど、ここぞというときの、彼らの行動やキラリと光る剣裁きに、スカッとしたここちよい風を感じる。 どんなに時が経っても、なにかの事情で落ちぶれていても、かつて秘剣を学び使いこなした彼らが、ひとつの信念をつらぬき、それぞれの敵を倒していくストーリーは時代小説好きでなくとも楽しめます。
どの短編も傑作ぞろいでひとつとしてはずれは、ない(当然だが)。 その中でも 「入墨」・「潮田伝五郎置文」・「穴熊」の3篇の切なさを味わって欲しい。 この3篇は主だった登場人物それぞれが、他人を思いやることで切なさを訴えてくる。 「切ない」・・・よく聞くし、使う言葉であるが、 この3篇で本当の「切なさ」ということを知ったように思う。 主人公だけでなく、さまざまな登場人物の気持ちになって これら短編を味わいつくして欲しい。 何度も読まないと、そのよさすべてが、わからないだろう。
藤沢周平って、やっぱり多感な高校生の頃に読むといいと思うなぁ。 ものすごく深い人間になりそうだ。
風景描写が素晴らしい。精緻な文章とはこうゆう文章を言うのだと思えた。 純粋な文章の表現力に驚くことは少いが、GWに実家で父親の本棚にあったこの作品に驚いた。ファンが多いのは知っていたが、藤沢周平が優れた作家であると遅ればせながら知った。 主人公は江戸時代、北国のとある藩の下級武士の子である。当時の武士の子弟は儒学や剣術に励み、将来の官吏としての修行に励む。幼少から主人公は剣に抜群の才能をみせる。 藩の権力争いによる父親の横死などの困難に耐えながらも友情や剣術に励む姿が描かれる。その話の展開は無駄が無く、無理が無い。 奇抜な展開で構成された小説と対極に位置するような、丁寧な描写と無理の無い展開による構成は同時に強い説得力とリアリティを持つ。 主人公は平凡な半生を送るのではない。しかし、抜群の剣の腕前を持ちながらも、やはり主人公は普通の人間であり、藩という組織の内部抗争に翻弄される下級武士である。剣は主人公を助けるが、主人公を超人にはしない。
主人公は良い結末を迎えるが、読後に残るのはやはり切なさである。不幸な結末となった人々や藩という組織の非常さ、抗いようもない下級武士の悲哀、過ぎ行く少年期、それらに対する緻密な描写が主人公の活躍があっても心躍る物語ではなく、切ない物語にしている。 印象的な場面が多々ある。 冒頭の自然描写。 物静かな父が大声を上げて進言し、その確固たる良心に日頃の尊敬の念を深めた場面。 主人公が死罪となった父に思いを伝えられなかったことを悔やむ場面。 刑死した父の遺体を荷車に載せて牽く主人公の描写。 先輩の官吏に従って野山に分け入って農村を巡り、稲の作柄を相談する場面。 上げればきりがないが、精緻な文章がそれぞれの名場面を表現しており、それらが無理のない展開で連なっている。 それぞれの名場面の描写はおそらく、作者が相当の労力を掛けて書き上げた労作と思われる。そう思えるほど良く練られており、緻密である。
良かった! シンプルなストーリーで話がつかみやすいうえに、親子愛あり、友情あり、 ほのかな恋心あり、アクションあり、人情あり・・・なにより見終わるとわかる 「儚さ」がたまりません。久々にいい映画を観た!という気分になれることうけあいです。 真田博之、宮沢りえ・・・etcの俳優たちの細かな演技に注目です。 表情からもセリフが伝わってくるようでした。
一回目は、主人公の生い立ちや、隣に住む少女とのほのかな恋心、友情、その地の美しい自然、のどかさ、主人公の父の生き様、強さ!など平和で何事もなく過ぎていくかと思える、そのとある藩に 主人公や周りの人々まで巻き込でしまう事件が・・・・。 主人公とその父とのの、多くの言葉では語らぬが通じ合う心、父としての教え。 何かを考えさせてくれるような、物語です。
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