勝川さんの漫画は、何故か懐かしい、新刊なのに、古本屋の棚に置かれてあるような不思議な時間を感じる。つい先日買ったばかりなのに、遠い昔に買って本棚にしまい忘れていたような錯覚も感じる。しかし、そこに描かれている世界は、何故か自分が子供の頃に体験したような新鮮な感情が瑞々しく描かれてある。自分の体験のようだ。それはお気に入りの町の、落ち着いた喫茶店の書棚にも置かれてありそうな小さな一冊だ。昼下がりの時間にのんびりと読みたいそんな1冊でもある。今の若い世代には記憶がないかもしれないが、幻燈機から投影される淡い彩色にも似たそんな物語でもあります。
周りとちょっと違う、周りにうまくとけ込めない、ということだけでいじめの対象になってしまう子供の世界。 大人の世界も同じかもしれない。 ちょっと変な転校生レオナとごく普通だけれど親友のいないテツヤが友情を育む過程がさわやかに描かれています。 いじめをテーマとした物語はいじめる側の陰湿さやいじめられる側の苦悩を延々と語りがちですが、この小説は 二人の少年の成長に力点がおかれ、読んでいてとても前向きな気分になります。いつしか二人を応援している 自分に気がつくはずです。 いくつかの謎がそのまま明かされないのも児童文学らしく余韻を残してまたいい感じです。 大人にも子供にもすすめられる名作です。
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