あまりにも悲惨でショッキングなストーリーだった。淡々と語られる自らの少女時代。暗く深く果てしない心の闇の底では、幼い少女の悲しみと諦めがどろどろと渦巻いていた事だろう。大人とは違って自らの意思では動けず、ひどい親にでも身をゆだねるしかない子供。あまりに可哀想で不憫でいたたまれない。 全てを他人の責任にする身勝手な母親と、自らをお父様と呼ばせつつ子供を虐待し、無理矢理に性的関係まで結ぶ、籍さえ入っていない養父。養父に反攻するなと言ってのける母親の神経は全く理解できず、腹立ちを禁じ得なかった。 人格が壊れてもおかしくない生活環境で育ったにも関わらず、著者は現在大いに活躍している。つくづく素晴らしい底力を持った女性だと思った。
以前「頂上対談 (新潮文庫)」というビートたけしの対談集で、松本人志が読む小説の話で 内田春菊の小説がすごいというようなことを語っていて、今さら(初版は1993年)ながら手に 取ったのがこの本。 松本がこの本を指して言っていたのかは定かではないが、この本はまちがいなくすごい、を超 え惨い。帯に自伝的小説とあり、どこまでがフィクションなのかは分からないが、エピソード のおおよそは彼女の体験なのだろうから、よくぞまっとうな大人に育ったと彼女に拍手を送り たくなる。
実父に別れを告げた母、私、妹の家庭に養父がやってくる。この養父との生活が作品のメイン テーマになるのだが、この男の最低ぶり、鬼畜ぶりはぜひこの本を読んで直に体感してほしい。 男というものがここまで許しがたく醜悪な化け物として描かれた作品を私は他に知らない。
読んでいてさらに読者を絶望の淵にたたき落とすのは、「私」の苦しみを理解することなく 無批判に養父に追従する母親と、そんな状況下でもいい子を演じる妹の偽善ぶり。 血の繋がったかけがえのない家族にさえ助けてもらえないという状況下、彼女はどうするか。 空想の世界に逃げ込むのだ。クリエイティブな職種の人と歪んだ家族との間に相関性があるの は確かにうなずける。
「父―娘」の歪んだ関係が主題の小説は他に『永遠の仔』を読んだことあるが、あれが男性の 書き手で、この本が女性の書き手だったことも関係があるのだろうか、こちらの方がはるかに 怒りと憎しみが伝わってきた。こんな父親にはなるまいと、親になる予定もないのに思わず決 意してしまうのである。
あまりにも悲惨でショッキングなストーリーだった。淡々と語られる自らの少女時代。暗く深く果てしない心の闇の底では、幼い少女の悲しみと諦めがどろどろと渦巻いていた事だろう。大人とは違って自らの意思では動けず、ひどい親にでも身をゆだねるしかない子供。あまりに可哀想で不憫でいたたまれない。 全てを他人の責任にする身勝手な母親と、自らをお父様と呼ばせつつ子供を虐待し、無理矢理に性的関係まで結ぶ、籍さえ入っていない養父。養父に反攻するなと言ってのける母親の神経は全く理解できず、腹立ちを禁じ得なかった。 人格が壊れてもおかしくない生活環境で育ったにも関わらず、著者は現在大いに活躍している。つくづく素晴らしい底力を持った女性だと思った。
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