今作は数で勝負、とばかりにワラワラ出てきます。良い点はいつ悪夢が終わるか分からない恐怖の演出。悪い点はサブキャラの頑張りで死ぬ、一匹当たりの弱体化。こういう映画って悪い人間の存在も重要ですが、その面から言えば前作の方が断然上。ラストシーン以降、危険がないという保証が無いのに安心してるのが、あ?ああ、終わったんですか。という気にさせる。でも一作目より映像の違和感など随分解消されていて、暇つぶしには十分エキサイティングな映画だと思います。 ディープブルー(サメのほうの)ばりのびっくり系シーンは良かった点です。
第96回直木賞受賞作 第40回日本推理作家協会賞受賞作 第5回日本冒険小説協会大賞 週間文春 1986年 国内部門第4位
日野楽器のフリーのPR担当漆田亮は、来日したスペインの名ギター職人ホセ・ラモスから相談を受ける。それは、20年前に訪ねてきた日本人ギタリストを探すことだった。当時 売ることのできなかったギターを、あらためてプレゼントしたいのだという。PR効果を期待した日野楽器の後押しもあり、漆田は、サントスとしかわからないギタリストの行方を調査し始める。
時代背景は、スペインがフランコ政権下にあった1975年。本作品の前半は、サントスの捜査行に費やされる。漆田によって、徐々に明らかになっていくフラメンコ ギタリストとしてのサントスの過去。そして、ついに息子のパコこと津川陽までたどり着いたとき、ラモスの本来の目的が、スペインの至宝を埋め込んだギター”カディスの赤い星”の奪還であることが判明する。
ここまでは、単なる地味な人探しだ。どう展開していくか先が全く読めないが、じりじりさせつつ、飽きさせることないのが逢坂剛さんの凄さ。
ストーリーは、ラモスとともに来日した孫娘フローラが、日本の過激派に接近するに至って俄然キナ臭さが漂ってくる。フローラは、フランコ政権転覆を目論むスペインの反体制過激派集団の一味だったのだ。 ・・・
後半からは、舞台をスペインに移して、銃撃戦ありのド派手な大活劇が始まる。フランコ暗殺計画に巻き込まれていく漆田には、反体制過激派だけでなく、治安警備隊からも狙われ、ピンチ、ピンチの連続が待っている。いちビジネスマンである漆田が、何故こんなににクールでタフ? という野暮な疑問はかなぐり捨てて、この展開に酔いしれるべきである。漆田は、幾度も命を落としそうになりながら、フローラと、カディスの赤い星を追う。
船戸与一さんの作品もだけれど、血煙舞う系の冒険小説は、海外が舞台となるとスケールがでかくなる(国内の冒険小説は、自然との闘いが主になるだろうか)。とくにその国々が暴力が支配的であると、一定の制約のもとで行動しなければならないという、緊張感が常につきまとう。ワイズクラックも、違和感がなくなってしまうから不思議だ。前半から後半へかけて、いきなりトップスピードというのも本作品の魅力のひとつだろう。
本作品は、まだ終わらないのか というぐらい、驚きをともなってクライマックスはいくども訪れる。これでもかと引っ張りに引っ張って、ラストは完全燃焼するのである。これだけの大作を、作家として売れるまであたためて続けた逢坂剛さん恐るべし。まさに魂の一冊といところか。
いい!見事な演奏。情感豊かなスペインの旋律を、見事に演奏している。大変魅力的な演奏。
格別にテクニックがあるとは思えないが、とても美しいギターの音色を持ったギタリスト。この一枚でギターファンになった方も非常に多い、お勧めの一枚。ひまわり、バリオスの郷愁のショーロ、パバーナ・カプリーチョ、などギター曲の名曲も多く、ゴンザレスの教則本とあわせてお勧めの一枚。
著者がデビュー前に書き、10年経って単行本となり、その後20年して今回の新装文庫本が出たそうです。 主人公の軽いノリの冗談や皮肉には、上巻の半分くらいまで違和感を覚えていました。が、舞台がスペインに移るあたりから痛快にすら感じるようになってきます。 そしてラストはとても悲しい。プロローグにある「その秋、わたしは一度死んだのだった」がわかります。 いずれにしても古くささを感じさせず、今読んでも違和感なく楽しめる本です。
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