以前読んで非常に感心し、いろんな人に勧めた結果、本自体がどこかにいって戻ってこなかったので再購入・再読した本。三島由紀夫の純文学的小説ももちろん素晴らしいが、三島由紀夫の純文学作家としてではない人間味を覗き見ることのできる本書は、気軽に楽しく読めつつも目から鱗の素晴らしい言葉が並んでいる。
「教師を内心バカにすべし」 「大いにウソをつくべし」
などなど、一見不道徳なことを勧めているようなタイトルがずらりと並ぶが、そのように不道徳を勧めておきながら最後には上手に「道徳的な」結論にもっていく手腕はさすがというしかない。また、最初から道徳的な正しいことを勧める押しつけがましさとは無縁ときている。
また、さらりと書かれた文章の中にも人間の心をうまく解説したり、「うまいこというなぁ」と思わせる言葉がたくさん見つかる。 「公約を履行するなかれ」の中の言葉を紹介しよう。
「しかしわれわれが一等ごまかされやすいのは、一見現実的、一見具体的、一見実現可能にみえるような公約です。(中略) だからなんの選挙でも、一千万円の約束より三千円の約束のほうが安心だと思って投票すると、その三千円ももらえないことになって、バカを見るのである。」
「よく考えてみると、公約を履行しないのは政治家ばかりじゃない。社会へはじめて出る青年も、就職試験のときは、社会にむかって自分の人生の目的を述べ、一種の公約をかかげるわけだが、一年もたてば、自分のかかげた公約なんか忘れてしまう」
四十年以上も前に書かれた言葉だが、今の時代にも十分通用する鋭い視線が、軽快で軽い文章の中にたっぷり含まれている。
松本清張、三島由紀夫などの生前の映像に興味があったので購入しました。「金閣寺」などでしか見れなかった三島の肉声の映像は衝撃でした。 棟方志功の版画作成シーンや、岡本太郎の世界観など他にもいいシーンがたくさんあるのでおすすめです。自分はすでに植村直己はテレビで見たので星4つにしておきました。
本書は本書の題名ともなっている前半の「若きサムライのために」 という、昭和43年から一年間、雑誌pocketパンチ Oh!に連載された エッセイ部分が面白い(この部分は☆4つ)。
約40年も前に書かれたものだが、現代に通ずる論理ばかりである。 たった半世紀ばかりで、人間というものが大きくは 変わらぬものであることのよき証左であろう。
目次 若きサムライのための精神講和 若きサムライのために 勇者とは 作法とは 肉体について 信義について 快楽について 羞恥心について 礼法について 服装について 長幼の序について 文弱の徒について 努力について お茶漬けナショナリズム 東大を動物園にしろ 安保問題をどう考えたらよいか<対談>猪木正道 負けるが勝ち<対談>福田赳夫 文武両道と死の哲学<対談>福田瓦存 あとがき 解説 福田和也
三島は生きながらえて欲しい大人物であった。本来ならば、 彼に代わって死ななければならない人間がもっとたくさん居る。 それなのに、それら死すべき人間に代わって、三島が死んだ。 死して日本の国に喝を入れる。 それが彼の使命であったのだと思いたい。
完全なる美。金閣はここでは美の象徴として描かれています。美そのものに善悪はない。しかし、圧倒的な美は、感受性の高い主人公の心を鷲掴みにしてしまうようです。格調高い文体で描かれたこの作品は、私にとって三島由紀夫を読み漁るきっかけとなりました。作者の美に対する探究心を見た思いがしました。歴史的事実である金閣炎上をモチーフにしているせいか、読みやすいように思います。
どなたかがレビューコメントをされていたが、この作品が未だDVD化されていないことにたいへん疑問というか、落胆を感じる。 この映画は一言でいうならば、メチャクチャ面白い。映画はこうでなくてはいけない。緻密に練られた脚本といい、自然で迫力のある演出といい、リアリティがあって緊張感のある殺陣といい、文句をつける隙がない。もちろん俳優陣もすばらしい。勝新太郎、石原裕次郎、倍賞美津子(個人的に大好き)…。だが、もっともインパクトのある出演者は薩摩藩の田中新兵衛を演じる三島由紀夫だ。もともと俳優ではないのだから演技自体はちょっと致し方ないとしても、あの気迫やからだの動きはさすがですばらしい。特に、自分にふりかかった疑惑を晴らすために一切言い訳せず腹を切る場面が印象的だ。それからこの作品が過去の時代劇と一線を画すのは、三島の自決の場面をはじめ、斬り合いでの血しぶきがリアルでハンパじゃないということだ。この作品はやはり画質のいいDVDかブルーレイで楽しみたいものである。
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