『補給係』は、狙撃兵が生まれて初めて人を殺すまでの過程を描いた作品。
標的に正確に命中さすための、具体的な銃器取り扱い描写が詳細で、大変勉強になった(使うことないけど)。
主人公は、淡々と忠実に任務を遂行するのだが、復員後、繰り返し見る夢の中での描写に救いが見える。
『四月』は、精神病患者の少女(17歳)の話。
農場でわりと自由な共同生活をしている。
他人と心が通じ合えたと思った後の幻滅。
少女の哀しみが痛いほど伝わってくる。
が、淡々とした描写のせいか、不思議と読後は爽やか。
『熱帯の蝶』は、祖父譲りの蝶のコレクションを持つ外科医の夫婦の話。
蝶を求める祖父のジャングルでの冒険談を挟みながら進んでいく。
他人との精神的に親密な繋がりをあえて避けている主人公に、妙に感情移入してしまった。
『すべて処分すべし』は、町に溶け込めないでいる母子の話。
13歳の一人息子(“天使のように美しい少年”)は、虚言癖に化粧の趣味まである。
雨の中、息子を置き去りにする事を一瞬でも思った母と息子との会話が美しい。