その中の大好きな「フレディもしくは三教街~ロシア租界にて~」について少し・・・。
愛の歌です。ただ、その歌のメッセージはもっと深いところにあります。
♪フレディあなたと出会ったのは 漢口(ハンカオ)♪ではじまり、大好きなフレディがおじいさんになり、私がおばあさんになるまで、幸せに一緒に暮らしたいと願いをもった女性の語りを歌にしています。
歌詞に歌われた「漢口(ハンカオ)」という地名は、中国にある今の武漢です。フランス租界やロシア租界という歌詞でもわかるように、日中戦争前の「漢口(ハンカオ)」が舞台です。
そんなステキな街のステキなカップルの平和な日常が描かれていましたが、ラストで悲しい結末を迎えます。愛する二人の夢さえも奪っていく象徴として「戦闘機」という歌詞が歌われます。日中戦争当時、南京が陥落した後、蒋介石は武漢に政府を移します。そこへ日本軍は航空兵団によって空爆を行い、武漢は陥落しました。1938年10月のことです。
もし、戦争がなければ、まったく違う人生を送れたはずなのに、という激動の時代を生きなければいけなかった人々の切々とした願いがこの歌には込められています。平和の大切さをこのようなやりきれないラヴ・ソングで語らせているのです。
ただのラヴ・ソングだけに終わらないのがグレープ時代の「さだまさし」の個性でもありました。物語は架空の設定ですが、このような情景は現在でも世界中で起こっています。声高に平和を叫ぶのではなく、まるで映画のワンシーンのように情景を鮮やかに描いたさだまさしの素晴らしさに拍手、拍手。