水源―The Fountainhead
ある分野において天才的な能力を持ち、それが理想の状態で発現されることを望み、機会に恵まれた時には私利私欲なく当該業務を遂行する人。ただし、確実な理解者はいるけれど、当人・結果が世間一般から賞賛されるとは限らない。
どこの世界・どの分野にも、上記説明に該当する人はいるだろう。『水源』を読んだ今、そのような人を「ロークみたいな人」と呼ぶことにする。思想的なことは理解したとは言い難いが、本書を読んでいて、色々な人達のことを考えた。そう、有名政治家から仕事関係で出会った知人に至るまでの各層だ。更に、自身についても考えさせられた。ローク的な人を馬鹿にしたり裏切ったりしたことが少なからずあった。彼等には申し訳なく思っている。
訳者である藤森氏のツイッター内に「ローク的近代人を通過しないと、霊性と合理性を兼ね備えた立派な日本人になれません」の一節があった。なるほど。自身が立派になれるかは自信ないが、少なくとも「今の自分は『水源』中の○○みたいだ」として自身の行動を評価するための基準となりそうな気がする。また、明治期に『西国立志編』がベストセラーになり、多数に好影響を与えたという話がある。諸々の混乱が見受けられる現代において、本書がそれに近い役割を果たしてくれれば、と感じた。
本書は確かに厚い。私が購入したのは2年ほど前だが、あまりの厚さに開く気がせず本棚に眠っていた。先週、埃を払い、読み始めた次第。小説のレビューでネタバレは好ましくないので中身については触れないが、とにかく面白い。読み進めたくてどうしようもなく、中断するのが苦痛だった。長期の休みが取れる人は、その時に読んだ方がストレスを感じずにすむだろう。
購入を迷っている人たちへ。普段から本を読みなれている皆さんなら大丈夫(読書の習慣がない人が『水源』のレビューを見ることは無さそう)。普段読んでいる3〜4冊分の読書時間を本書のために提供するだけの話です。