北森さんの死で中絶した蓮丈ものが受け継がれた。 新進ではあるがパートナーの手によって。 微妙に変わる文体ではあるけれども、流れる思想はしっかりとしている。 でも解決に至る道のりはいささか早急で、こじつけるまでは行かないまでも神話の世界を現実に照らし合わせている。 それでもミ・ク・ニは活躍するし、マティーニも杯を重ねるのだろう。
北森氏の作品はこれが3作目。 最近時の民俗学ミステりーとは、味わいのことなる連作集である。 裏通りのビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤。カウンターの中という狭い世界にずっといながら、なぜか、世界のことが手に取るようにわかる、謎解き料理人である。 スパイスとほっとする温もりの料理を出し、常連客の持ち込む謎を、鮮やかな推理で解いていく。 常連客も、その料理の旨さに、何か普段と違う発想やアイデアが生まれてくるのかもしれない。 タイトルにもなっている、西行の句 願わくは花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ この余韻が最後まで漂い、不思議なほっとする感覚を味わいながら、読ませてくれる作品である。
作品を終わられるために書かれた連作にしか思えない。まだまだ世界を広げることが出来そうな感じなだけに残念だ。今までの秘密を公開していくことには何とも思わないけれども、終わらせ方が強引すぎる。
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