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映画パンフレット 「遠い雷鳴/ミドルマン」 監督 サタジット・レイ

 本作(『遠い雷鳴』のほう)は岩波ホールで初公開時に見た(昭和53年5月11日木曜日)。1978年日本公開。今日のようにミニ・シアターが全国各地にあって世界の珍しい映画が盛んに見られるような状況ではなかった時代に、世界から優れた映画を日本に紹介していた「エキプ・ド・シネマ」の第19回ロードショーとして公開された。
 本作はベルリン映画祭で1973年度のグランプリ受賞作品。1955年から始まる「大地のうた」3部作などでインド映画の芸術的側面での最大の監督となったサタジット・レイが確か初めてカラーで撮った作品。
 本パンフレットも当然、持っている(定価300円)。岩波ホールの他の作品のパンフレット同様に監督の作品総目録(当然1978年までの)と、採録シナリオが掲載されている。佐藤忠男さん、登川直樹さん(当時、日大芸術学部教授=現役のとき冷やかしで同学部を受験したら、何と面接官だった。「好きな監督は?」と尋ねられ、「そうですねえ、ジョン・ブアマンとかロマン・ポランスキーなどです」と答えると「ほ〜」と感心していたことを懐かしく思い出す=でも落ちたが)などが作品研究を書いている。
 遠い雷鳴とは、カミナリとは関係がなく、隣接するインド・シナ地方各地での日本軍による砲火での轟音のことを指す。直接戦禍を受けたわけではないインドなのに、この影響でベンガル地方では1943年だけで500万人に及ぶ餓死者が出たとされる。本作はその惨劇のほんの一握りの人たちのことを描いたに過ぎない。
 ガリガリにやせ細った主人公家族の使用人が「おさかなが食べたい」といって亡くなっていくシーンのあまりのむごさに胸が裂かれる。
 最近、日本の戦前の軍部による覇権・侵略行為が間接的に戦後の各国の独立機運を促し(それはそういう見方は一面でできることは否定はしないが)、とりわけインドからは大いに歓迎されていた、というような言説があふれかえり過ぎていることが目に余る状況だが、そういう言説はそもそも当時の為政者が日本の威光を借りて権力維持を図りたい意図で出されていたものがほとんどだ。民衆レベルであの戦争に対してどういう感情を持たれていたのかは、こういう映画などを見てよくよく学習するべきだ。でなければ、真の親善交流の上で日本人は大きなすれ違いの失敗を生むことになるだろう(いやもう、すでにそうなり始めているともいえる。これだけ国際感覚からずれた人間が増え始めると)。
 
 
 



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