◆「シベリア急行西へ」
シベリア急行の列車内で起きた殺人事件。
本作は、もともと著者が在籍していた京大推理小説研究会伝統の 犯人当て小説として書かれたものだそうで、銘探偵・メルカトルが 登場しますが、正攻法のロジックによって真相が究明されています。
とくに、旅客機の尾翼が線路に落ちるという事故のため、 列車が急停車を余儀なくされることで、容疑者のアリバイ を無効にするテクニックが秀逸でした。
◆「化粧した男の冒険」
◆「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」
萌え巫女姿の探偵、訳ありで自殺願望ありのワトソン役の大学生が偶然(?)遭遇する古き信仰が残る旧家での連続首斬り殺人。犯人は?動機は?その18年後にまた同じ事件が発生!模倣犯か?それとも連続殺人なのか?真相は? 著者の作品及び文藝春秋からすると単なる正統派で終わるわけないと思いながら読んでいましたが、やはり後味の悪さは用意されていましたね。しかも従来の作品に勝るとも劣らない衝撃。 本格ミステリとして傑作のうちに完了出来るものを最後にひっくり返す、この読後の後味の悪さは毎回なんとも言えませんね、病みつきになります。 …という従来の作者の路線そのままであると了解してお読み下さい。巫女さん姿の萌えな表紙のみで判断すると後でしっぺ返しに合います。 後味の悪い結末がアナタを待っています、でも間違いなく本格。そして怪作。傑作。今年度本ミス1位候補の作品ですね。
新本格派が出てきた時の批判みたいな 「リアリティーがない」とか「人が描かれてない」とか そういうのは置いといて、 思いっきりだましてもらえてすごく気持ちよかった。 詳しく書くとネタバレになるんで書けないけど、 いままでありそうでなかった斬新なトリックじゃないのかな。 麻耶雄嵩ファンほどだまされやすそう。 とにかく、一言一句逃さず読めば 最後の感動も倍増間違いなし。 今までの麻耶作品みたいな「そりゃねーだろ」的な驚きではなく、 「まんまとしてやられた」って感じ。 間違いなく『鴉』に並ぶ傑作中の傑作。
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