死刑囚楠本他家雄の最後の3日間を描いた小説。
下巻の解説において中野孝次氏が 死刑制度の是非をめぐってあれこれ論じられているが, 私は本書のメインテーマは「信仰と愛」であると思う。 もちろん小説なので多義的な読み方が許されるのだろうが, そこにばかり注目が行くのは本書にとって不幸であると思う。
本書において死刑囚という極限の状況は 信仰をテストするための多く在る設定のうちの一つに過ぎない。
本書における拘置所の囚人たちは, ある者は拘禁反応という病理現象を起こし ある者は自殺し, ある者は死刑を回避するために自己正当化を繰り返す。
ただ楠本(と隣房の垣内)だけが心を静かに 生産的な毎日を送っている。 それは楠本が信仰を持っているからのようだが・・・。
では楠本の信仰は本物なのかと, 本書ではたとえば複数の精神科医学者に楠本の「病理」性について分析させている。 これらの分析は,楠本を「無情性精神病質者」,「拘禁性誇大妄想」などと断じる, 非常に辛辣なものとなっている。
しかしこのような批判を受けるのは理不尽である・・・というわけではない。
何故なら楠本の信仰は,本人が最後に認めたように, 当初は「底の浅い頭,頭の信仰」に過ぎなかったのである。 その信仰が深化し本当のものとなったのは, ある女子大生(恵津子)との文通により 初めて「愛」というものを体験したからである。
楠本は,そうして愛を体験し真の信仰を得たところで死刑執行の宣告を受ける。
この小説構成は非常に巧みですばらしく, 上中下巻を長い間かけて読み進めたこともあり, 「お迎え」の宣告に, 読者の私も全身の血が凍るような衝撃を受けた。
読み終えてから半年ぐらいたつが 今も折に触れて読み返すぐらい大切な小説となったので あまり難点は言いたくないが, ただ各死刑囚のモデルが簡単に同定できるぐらい設定がほとんど変えられてないのは, ノンフィクションではないのでいかがなものかとは思った。 あと聖痕や啓示に関する記述も, もうちょっと禁欲してもよかったのではないか,と思った。
以上若干の難点はあるが 日本にこんなすごい小説家がいたのかと感銘を受けた作品であった。
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