約十年前に竹山逸郎の16曲入りベスト盤が発売されましたが、今回は21曲入りです。竹山逸郎の異国シリーズや隠れた名曲が収録されています。竹山逸郎の魅力を再認識できるヘスト盤だと思います。
著者はかつて、その政治力から文壇に天皇の如く君臨した人。殆どの政治家が死後、生前とはうってかわって一顧だにされないのと同様の運命をこの人も辿る。代表作のレビューを今もって誰も記していないというのが、厳然たる事実である。アーティストでもなければアルチザンでもない。政治家。文壇政治家の末路である。 といいながら、この短編集、じつはそんなに悪くもない。高みから見下ろして自己犠牲を怠っているのでもない。私小説的切り口で両親はもちろん、親戚までもさらし者にしている。親戚はいい迷惑だろう。
本当は面白い大傑作なのに何故か読まれなくなってしまう作品というのが、たくさんあるんだろうな、と思わせられる作品である。 歴史的背景も深く、しっかりと記述されていて、そのなかで、等身大の親鸞が動くのである。吉川英治の親鸞(あの作品はあの作品でとてもよいのだが)を読んだ後、丹羽親鸞を読むと、リアリティがあり、より入り込んでしまう。 とりとめもないが、2つ書いておきたいことがある。ひとつは、川端康成の伊豆の踊り子みたいな、駄作を名作と持ち上げている一方でこういう作品が埋もれて忘れられていってしまうのはもったいないということ。 あと、オウムみたいな事件もあり、宗教=いかがわしいものと位置づけられてしまって、宗教文学というのは広く読まれるものではなくなってしまっていたと思うが、最近の健全な仏教ブームにのって、この作品をはじめとする、宗教文学が(江原小弥太とか倉田百三とか)簡単に手に入るようになったらうれしいなと思う。
|