安彦良和先生の東西ヤマト両立論には必ずしも賛成しない私ですが、こういうこともあったかもしれないと思わせる筆力はさすがです。ヤマトタケルの女装の件をこう描くとは!舌を巻きました。
『古事記』や『日本書紀』に出てくるヤマトタケルの物語がファンタジー風に描かれています。タケルはオトタチバナとともに邪神ツクヨミを討つべく、月の神殿へと向かい…。最後のヤマタノオロチとの戦いは迫力があります!
手塚治虫先生他、多くの作家によって語られ続けている日本の神話物語です。 少女漫画独特のタッチに、男の私は宝塚歌劇を思い出しました。 導入部分多少読んでいてタルいですが、主人公が熊襲のタケル兄弟を付け狙うあたりから俄然面白くなります。最後まで一気に読んでしまいました。ヤマトタケル、いい奴で男らしくてかっこいいです。父親から疎まれながらも日本中を平定していきます。英雄物語として良く出来ています。 ただ、英雄に引きずりまわされる家来ややられる側からの視点には欠けます。それがあれば、「いい奴」だけではない、光と影のコントラストが効いた深みのある英雄像になったと思います。 ともあれ、歴史好きな方にはお薦めしたい四六版ハードカバーにふさわしい一冊です。
作家としての梅原猛先生は、一気呵成に作品を仕上げる名人だったと思っています。梅原作品の持つ炎のエネルギーと、山岸先生先生の持つ懐の深い人間観察力が合わさって、この作品が生まれたのではないかと思います。山岸先生には珍しい筋肉隆々としたタッチが、グイグイとストーリーを展開する梅原作品を見事に具現化しようとしているように感じました。ヤマトタケルは天皇の皇子でありながら、兄の皇太子を殺したことで父王に疎まれ、日本全国の討伐を命じられます。九州で滅ぼした敵から名前を譲られたことは、手塚治虫先生の「火の鳥」でも出てきます。私は、ヤマトタケルと聞く時、全国に散らばる白鳥(しらとり)や大鳥(おおとり)や鷲(わし)など、鳥関係の字のついた神社がとても多いことを思い出します。それらの神社の多くは、ヤマトタケルが亡くなった後白い鳥に化身して、ヤマトの方角に飛んでいったという伝説を伝えていることが多いのです。ヤマトタケルはそんなにもヤマトに帰りたかったのか、と思うと胸がしめつけられるようです。都市で働く人が増えた現代でも、やはりふるさとに帰るに帰れない人々のなんと多いことか。事情は色々あるでしょうが、私自身も、死んだ後でもよいので、鳥になってふるさとに戻れたら、と願う一人です。ここに描かれているヤマトタケルの心優しく気高い人間像は、一服の清涼剤のようです。実在の人物かどうかはともかく、山岸先生のヤマトタケルは追い詰められ傷つき、あまりにも悲劇的ゆえにとてもセクシーで魅惑的です。
日本書紀云々と照らし合わすと色々とおかしい点は多いとは思うが、勧善懲悪のヒーロー物として観れば面白い!宇宙戦神や八岐大蛇はロボット対怪獣の様であり、諸々の出演者が特撮ファンを唸らせる顔触れであるなど見所は多い!そういった点ではかなりオススメ!私は個人的に阿部寛の怪演が印象的です!
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