反戦のメッセージだけでなく、患者と王様になった主人公が村で過ごす、夢のような別世界の奇妙なおかしさ楽しさが魅力。 ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドが初々しく可愛らしい。 それだけに有名なラストは、せつない。 純粋な者の美しさ。本当に狂っているのは誰なのか?本来持ち得る映像作品の本当の力を感じます。
以前テレビで2,3回観ました。また、とっても観たいのですが、DVDは既に絶版。残念! レンタルショップにビデオがあれば観ることができます。
今回のソフト化ではじめて見たが、なかなか楽しい。 ライトなコメディだがテーマの一つに《戦争の狂気》を置いているので寓意を深読みできるようにもなっている。(製作者達がどこまで意図していたのかはわからないが…) 精神科病棟の患者の描写は、現在の映像倫理からみると際どいと思う。 だが、その描写から戦争の狂気をゆっくりと浮かび上がらせる手法は実に深い。 終盤、《彼ら》が《芝居)をやめるシーンはある意味で圧巻だった。
他に、吹き替えの楽しさも特筆物だ。個人的にはそれが一番楽しみだった。(はじめから吹き替えで観ることを勧めます) 名手達の吹き替えは聞き応え十分。ところどころ(吹き替えが現存しないので)字幕に切り替わってしまうのは確かに残念なのだが、だからといって新録音にする必要はないと思う。 しかし、自主規制のせいなのか吹き替えのあるシーンでも、ところどころセリフが寸切れ手しまうのは残念。倫理的な面からの処置だろうけども… (『気狂いピエロ』を『ピエロ・ル・フー』と書かれてもピンとこないのと似ている。 程度にもよるが創作物に対してこういった処置は見当違いだと思うが…)
あと、【まぼろしの市街戦】という邦題のセンスの良さに拍手。素晴らしい魅力的なタイトルだと思う。
この映画は終始スローテンポで、切れ味のよいシーンはない。 だが、それがむしろ長所で、優しげな音楽やサーカスのような映像が心を癒す。 のんびりと噛み締めると楽しみの増す映画だ。
本DVDではテレビ放映時やLD版ではカットされていたラストシーンが収録されています。
恥ずかしながら私はカットされたバージョンしか見たことがなかったので、「裸でチャイム」のシーンの後にまだ続きがあったのには、ちょっと驚き。
それから嬉しいのは、テレビ放映時の日本語吹き替えが収録されているという点。
富山敬、広川太一郎、小原乃梨子、雨森雅司、大平透、富田耕生、大塚周夫といった豪華キャストの競演。日本語吹き替え版で視聴していて思わず鼻血が出そうになりました。
それにしてもジュヌヴィエーブ・ビジョルドはかわいいなぁ。
第一次世界大戦中、パリ北方の小さな村を訪れたイギリス軍の通信兵(伝書鳩の飼育係)(アラン・ベイツ)。 彼の使命は、ドイツ軍が撤退時に仕掛けていった時限爆弾の撤去だった。 村の住人は避難しており、残っているのは解放された精神病院の患者と動物だけ。 患者たちは、村に繰り出し、思い思いの生活を始める。 残った通信兵は、自らを「ハートのキング」と名乗ったため、患者たちからハートの王様と仰がれ、 奇妙な日常生活が始まるが、やがてイギリス軍、ドイツ軍が現れる・・・。
反戦のメッセージだけでなく、患者と王様になった主人公が村で過ごす、夢のような別世界の奇妙なおかしさ楽しさが魅力。 ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドが初々しく可愛らしい。 それだけに有名なラストは、せつない。 純粋な者の美しさ。本当に狂っているのは誰なのか?本来持ち得る映像作品の本当の力を感じます。
以前テレビで2,3回観ました。また、とっても観たいのですが、DVDは既に絶版。残念! レンタルショップにビデオがあれば観ることができます。
☆J・リトルウッドの有名な反戦ミュージカル舞台劇を映画化した、とてつもない超大作で、個性派の脇役として地道に活躍していたイギリス出身のベテラン俳優リチャード・アッテンボローの監督1第作であるが、第1作目にして、いきなり並外れた監督才能を存分に発揮、その素晴らしい出来映えには筆者の想像を超えて、ビックリ仰天させられた。彼の監督としての実力は『遠い夜明け』や『コーラスイン』、『ガンジー』、『永遠(とわ)の愛に生きて』等々の作品群を観れば一目瞭然。当時、映画館で本編を観賞したが、すこぶるゴキゲンになり、大喜びしたのを今でも鮮明に憶えている。これ程、完成度の高い作品にもかかわらず、我が日本では何故か過小評価されているのが、不思議で仕方ないが、こういう正真正銘の大名作にぶつかると断然嬉しくなってしまう。1914年初頭の欧州(ヨーロッパ)。 ドイツと同盟したオーストラリアとロシア、フランスの後ろ楯をもつ小国セルビアとの間は一触即発の危機に直面していた。そんな中、オーストラリア皇太子夫婦暗殺を契機に、同国外相ベルヒトルト伯爵(ジョン・ギールグット)はフランツ・ヨセフ皇帝(ジャック・ホーキンス)の署名した宣戦布告書をセルビアにつきつけ、ついでにドイツのカイザー(ケネス・モア)はベルギーに侵入し、イタリアと同盟を結ぶ。そこで、サー・エドワード・グレイ外相(ラルフ・リチャードソン)の外交手腕により、中立を守っていたイギリスも、連合国側として参戦を余儀なくされる。ここに1919年4年7月、第一次世界大戦が勃発。志願兵制度だったイギリスは、ヘイグ将軍(ジョン・ミルズ)の指揮下のもと徴兵運動が行われる。その熱狂的な興奮の〈るつぼ〉にまかれ、戦争とは無縁だった筈の平穏なスミス一家の真面目な若者たちが幕兵に応じ、ベルギー戦線に出兵していくが、現実の戦況は、国民のお祭り騒ぎとは裏腹に連合国側とっては苛烈きわまりない不利な状況下にあり、予想外の苦戦を強いられ、次々に犠牲者が続出。英国派遣軍総司官サー・ジョン・フレンチ(ローレンス・オリヴィエン)は、そんな戦況を知りつつ、積極的な行動をとろうとしなかった。全ては英国軍上層部による身勝手な国策による、イデオロギーまみれの国家権力のプロパガンダに踊らされた故の悲劇であった。という、作品としては戦争の愚かしい不条理な部分や軍事批判、コミカルな程好いペーソスが入り交じった喜怒哀楽の物語に替歌を織り混ぜた、ゲーム感覚的なミュージカル形式のドラマ構成を軸にシニカルで、シュールなブラックユーモアを加えた洒落っ気たっぷりな社会諷刺劇風にお話が展開していく。戦争に翻弄される何の罪もない普通の庶民生たちの生活風景と軍部の丁々発止のやり取りの心理葛藤を客観的にとらえた新鮮な映像テクニックも非常に優れており、それを一段と際立たせるオーソドックスな描写も絶妙な相乗効果をもたらしております。スピーディーかつメリハリの効いた華麗な振り付けをしたのはエレナ・フェイザン。俳優陣も豪華絢爛で、ざっと並べると、言わずと知れたシェイクスピアの第一人者である重鎮ローレンス・オリヴィエを筆頭にラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッド、ジョン・ミルズ、ケネス・モア、ダーク・ボガード、スザンナ・ヨーク、マギー・スミス、ジャック・ホーキンズ、ジェーン・シーモア、ジャン=ピエール・カッセル、エドワード・フオックス、ヴァネッサ・レッドクレーヴと横綱級のオールスター・キャストが勢揃いしている。よくぞこれだけ知名度の高い名優たちがこぞって出演を快諾と思います。そして、映画史に刻まれるであろうと思われる、感動と情緒的なフィナーレには一喜一憂な気持ちにさせられた(涙)。約145分近い長丁場ではあるが、中だるみや迷いが一切感じられない〈ヒューマニズム〉を重んじる堂々としたリチャード・アッテンボロー監督の天才的なセンスが光る見事な演出力には拍手喝采を送りたい!☆。※【戦争】とは、決して〈素晴らしき〉ものではありません。勝敗や大義名分、善悪に関係なく、残酷で惨たらしいモノなのです…。
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