「火の鳥」のなかでこの鳳凰編が私は最も好きな作品です。 我王のすさまじい生き様を描いています。 命を軽んじていた我王が転換となる事件をきっかけに まったく異なった生き方を追求し始めます。そして 自分のもてるすべての力でもって命を燃やし続けようと しています。 命のすばらしさを描く手塚作品のなかでもとくに印象に のこる作品がこれです。
当時原作本をたくさん出していた角川のメディアミックス戦略で制作されたアニメ映画だったと思う。絵が違うなど云々以前に、「鳳凰篇」のダイナミズムあふれるシナリオを十分に生かしきれてない尺の短さ。2時間以上の大作として作るべきだったと思う。劇場では見なかったが、当時のCMだとアニメ映画「時空の旅人」と同時上映という形になっていてこちらは2時間位だったと思うが上映時間を逆にしたほうがよかった気がする。 この後、OVAで「ヤマト篇」「宇宙篇」が同じ製作会社のスタッフで製作されたが、これらも原作を読み直せば物足りなさを覚えるかもしれない。 けれども、後年NHKで製作されたTVアニメ版「火の鳥」よりはこれらの作品のほうが だいぶ面白い。
やはり文句なく面白い! 火の鳥はこれと太陽編が最高だな。
作曲者の和田薫氏は純音楽の作曲家であり、映画・アニメ・舞台の劇伴音楽でも知られる人物です。中でも『犬夜叉』『SAMURAI-7』など和風物・伝奇物の音楽は特筆すべきものがあります。ヴォイスドラマは見たことがありませんがサントラだけでも良い作品だったことが伺えます。手塚治虫氏の『火の鳥-鳳凰編』の原作を知って入れば大体の情景は浮かびます。挿入歌も見事な出来で、人物・作風を良く表しています。圀布田マリ子さん演じるブチの「旅は続く」は単曲でも聴きごたえがあります。感想としては、おそらく声優の演技で情感の動きを見せるためでしょうが、他の和田氏のサントラと比べると抒情性・躍動性は控えめで、大人な曲作りに感じます。注目したいのが「苦しみの茜丸」です。茜丸は某アニメ版では「善人だったのに権力に溺れて堕落した愚かな人物」という短絡的な解釈で描かれおり、その認識が『火の鳥 鳳凰編』全般のレビューなどでも浸透しているようで、残念に思っていました。その点「苦しみの茜丸」は本意ではない権力のしがらみにもがき苦悩している悲哀が伝わる良曲です。『火の鳥-鳳凰編』の空気が好きな方、和田薫氏の作風が好きな方は聴いて損はない曲目だと思います。
原作の「鳳凰編」のファンとしては、かなり違ったストーリー展開に抵抗を感じてもいいはずなのに、そんなことは ほとんどなかった。
火の鳥自体の解釈は人それぞれだろうが、本作の鑑賞後は「火の鳥=人間の生きることへの執着心のシンボル」と 私は感じとった。原作からつかんだものを、制作サイドが見事なストーリーと映像表現でえがいたと思う(そもそも 手塚治虫自身、死にたくない気持ちがたいへんに強い人だったそうである)。
主役二人から滲みでる人間の臭みと匂うように美しい画とのコントラストが圧巻。
マイナス点があるとすれば、女性キャラにおいて手塚漫画のもつ独特の色香が感じられないこと。それとやはり今と なっては、主題歌の古臭く安っぽい印象は否めない。
我王と茜丸が競うクライマックスは原作とはっきり違う。だが身の潰れるような不幸と罪を背負っても生きようと する我王の姿は、本作のほうがより強いエネルギー感をもって、みる者に迫る。「火の鳥」の真髄がそこにある。
|