ようやく大活字版で再版しました、円地文子さん訳「源氏物語」です。 国文学者玉上氏(この方は角川版源氏物語を訳されている)の力を借りて 5年の年月をかけて全巻現代語訳した労作。 非常に格調の高い訳文で一番読みやすい源氏物語だと個人的に思います。 この訳文の特徴は訳者本人の主観の訳を所々に忍ばせてあること。 もっとも本文を改変するのではなく奥行きを深くしたり 現代人にわかりやすい表現であって却って良心的な改変でしょう。 例をあげるなら若菜の「男女の仲が狭まる(直訳)」→「世の中が狭まる(円地訳)」 玉上さんが源氏物語訳注の解説で「男女の仲は平安女性の世の中に等しい」と おっしゃっていたのを後に読み、「なるほどなあ」と感心した訳文です。 レビューで書きましたとおり玉上版源氏物語とリンクした訳文です。 両者を比較するのも楽しいです。 当然単品で読んでも十分源氏物語の真髄を味わえる名文ですので 源氏物語初心者にもお勧めします。
好色家の夫に、妾探しを命じられた妻。 それを自分の立場を重んじてくれた信頼と受け取り、奔走し、 ついに二人の妾と共に、同じ屋根の下での生活がはじめられた。 ひたすら忍従と孤独の人生を送る女主人公の生き方を、暗い封建制が 色濃く支配する明治時代の家庭を背景に、完成まで八年の歳月をかけた 作者の円熟した筆が描ききる。 現代文学の最高傑作の一つと高い評価を得る、著者入魂の名編。 第10回野間文芸賞受賞(昭和32年) 以上社評から転写
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