スターリンの伝記はいくつか読んでますが、多分いままで発行されたスターリンものの翻訳本の中では最も読みやすい伝記だと思います。原著者の書きっぷりが明解なのか訳者が練達なのか、あるいはその両方か、読んでいてとくに難渋なところはありません。スラスラ読めます。著者はスターリンの人物像を描くことに焦点をあてており、それにはそこそこ成功していると思います。人によっては、革命時のスターリンの働きがいまいち良くわからない、とか、独ソ戦でのスターリンの戦争指導の実態が十分に描かれていない、とか、不満が出るかもしれません。そういう人はこの本でスターリンの人物像を掴んでおいて、さらに詳細な伝記に進めば良いでしょう。そうは言っても、この本は2段組みで400ページを超える大著です。入門書というには長すぎるようですが、大体スターリンの伝記は長大なものが多いので、本書は短い方に入ります。スターリンの伝記は正直言って、ヒトラーやナポレオンの伝記みたいには面白くはありません。しかし、その奇っ怪な人物像を知れば知るほど、一見凡庸にさえ思えるこの人物がなぜソ連邦の権力の頂点に立ちえたのか、そしてその権力を何十年も維持しえたのか、興味の尽きないところです。
評価が遅くなり申し訳ありません。またの機会がありましたらよろしくお願いします。
日本社会の現状や将来を考える際に、アングロサクソンやニュージーランドの改革だけではなく(それも失敗なのだが)、ラテンアメリカの構造改革からも学ぶところは多いはずである。日本の構造改革は、第三世界型新自由主義ではないものの、この本からやはり現在進行中の事態の輪郭は見えてくる。
ただし、ラテンアメリカの個々のケースの羅列といった観がないわけでもない。理論的にもう少し踏み込んで分析可能であったとも思われるので星4つ。しかし、野心的な試みであることは間違いない。
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