’04年、「このミステリーがすごい!」国内編第4位、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第8位に輝いた、神奈川県警の二村刑事を主人公にした、19年ぶり3作目のハードボイルドである。
二村は、世紀末の6月のある日、ビリー・ルウという日系アメリカ軍パイロットと出会った。ビリーと酒を酌み交わした彼は奇妙な友情を感じ始める。しかし、女の他殺死体が入ったトランクを、ビリーによってそうとは気づかぬうちに運ばされたため、彼は捜査一課からはずされ、閑職に左遷されてしまう。その直後、ビリーの操縦する小型飛行機が台湾で墜落したらしいという報せが届く。 一方で二村は、退職した先輩刑事からあるヴァイオリニストの養母の失踪捜査を頼まれる。ビリーの死を信じられない彼は、失踪人の捜索を進めるうちに、ふたつの事件が深いかかわりを持っていることを知るのだった・・・。
一種独特な雰囲気を持つ世紀末の横浜、横須賀を舞台に、街の人々、NHKの記者、怪しげな華僑、軍隊マフィアなどさまざまな人物が登場し、夜の街が描かれるだけでも魅力的だ。また短く切り詰めた文章と、粋で、時にはユーモラスな二村たちの会話のフレーズはクールである。
レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の枠組みを借り、そのオマージュに満ちた、男が友と飲み、そして別れるだけの物語だが、登場人物の造形、時代背景、セリフのひとつひとつに矢作ハードボイルドのオリジナルを堪能することができる。
送付が早いことは非常によく、予定以上に着いている。今後も利用したい。
『暗闇にノーサイド』、『ブロードウェイの戦車』、『海から来たサムライ』の角川3部作から25年。 そうか、そんなに経っていたんだなあ、という感慨で、一気に読みました。
『海から来たサムライ』は一昨年、『サムライ・ノングラータ』(同名のコミック原作があったけど)という名前でリライトされましたが、全く新しい小説での合作というのは、いつかは実現すると信じてきまものの、そろそろあきらめかけていただけに、今回『犬なら普通のこと』が上梓されたということを聞いただけで、魂が震えました。
でも、あまりに久しぶりだったせいか、最近自分が違う分野の本ばかり読んでいたせいか、読後感としては、ちょっぴりクラシックな感じが強いように感じられました。でも、もう一度読み返してみるつもりです。そうすると、じわじわわかってくることがあるかもしれないと思うので。 でも、自分の中では今年読んだ一番の小説にはなると思います。実は「悪党パーカー」シリーズを読んでないので、そちらのほうも、呼んでみたくなりました。
お二人の合作が、これからも次々と出されることになれば、ホントこの時代に生きててよかったぁ、とういうことになるのでしょうか。よろしくお願いします。
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