マラーホフファンとして、とても興味深く読みました。 幼少期からベルリン国立歌劇場の芸術監督就任まで、満遍なく書かれています。本文は2002年時点の内容で、それ以降については触れられていません。ただし、マラーホフの母上のインタビューは2004年12月のものです。 とても興味深かったのは、彼が役とどのように向き合っているかということでした。普段、舞台を鑑賞しているだけでは絶対に分からなかったことですし、今まで色々な映像や記事、書籍を通しては完全に知り得なかったことが書かれていたので、とても嬉しく思いました。 また、ダンサーとして、一人の人間として、ウラジーミル・マラーホフという人物が、とても優れた、不世出の人物であることを改めて実感することができました。つくづく思ったのは、彼の活躍期に、しかも絶頂期に居合わせることができて、本当によかったということでした。 マラーホフのファンの方は勿論、これから彼のバレエを観てみようと思われる方は、お読みになって絶対損はないと思います。写真も多数掲載されており、世界的に稀有なダンサーであるマラーホフの成長の過程を見られる数少ない機会だと思います。(個人的には、「コート」の写真が掲載されていたのが嬉しかったです)
私はホッファーを通してアーレントを知りました。往復書簡や論文と違って本書は日記です。あくまで自分用のメモであることと、他言語からの翻訳による微妙なニュアンスのズレ等により、一読しただけでは意味不明な文章が散見されます。わかりにくいけど何か意味ありげな文章の真意を探りながら読むのが好きな人にはお勧めです。私は本書を最初図書館で借りたのですが手元に置いておきたくなり購入しました。それにしても、ある事象を言葉でここまで表現できる人ってすごいな〜と、ただただ感嘆します。物事が安易に二項分類化され、性質の一部だけが言語化された状況に私たちは慣れきっています。安っぽい表現で言えば「言葉遊び」ですが、言葉を尽くして物事の本質に迫ろうとする哲学的なアプローチは、昔の和歌などのほうが優れていたのではないかと思いました。
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