~僕は十代の頃にファッションフォトグラファー、ブルース・ウェバーのファンになって88年に彼がドキュメンタリームービーを撮ったという事ではじめてチェット・ベイカーの存在を知ります。それ以来チエットの音楽、写真集をあさるように観ました。大人になればなるほど彼の存在が好きになってきています。是非、let's get lost~~ の復刻版をdvdで出してください!業者の方かならす売れると思いますよ!お願い!~
ジャズ界広しと言えどもチェット・ベイカーのボーカルを凌ぐボーカルがあるとも思えないし、これから出てくるとも思えない。 1950年代から彼はいつの間にか歌い始め本作はその評価を確立したアルバムだ。だが、僕が是非とも体験していただきたいのは、この若き日のチェットのボーカルを聴いた後で、最晩年のチェットのボーカルを聴くことだ。特にスティープル・チェイスから出ているペデルセン+ダグ・レイニー盤数種。そしてフランスあたりで録音した盤は最高である。人間は徐々に枯れていく。彼の中性的と言われるこのボーカルも枯れていくのだが、この『Sings』のボーカルが熟成し枯れた時どうなるか、である。そしてトランペットも枯れていく。 何て素敵なアルバムだろう。僕は晩年と若き日々のチェットのボーカルを何度も何度も行き来してしまう一人だ。
どうしようもないようなこのレイジーさ、陰鬱さ。隠し切れない孤独と狂気が、甘く、クールでムーディでロマンチックなフレーズの隙間からぽろぽろこぼれ落ちてくる。僕がこのレコードを聴きたくなるのは、きまって真夜中の一人の時間だ。
人々のトランペッターに対する見た目のイメージは、ちょっと気取っているけどカッコイイと言うところだろうか。しかしながら、これが職業音楽家となると、タフ、繊細、頑固といった他に、精神・金銭両方の自己マネジメントの素質が必要になるであろう。本書は、チェット・ベーカーというジャズトランペッターの、それらの性向と音楽的才能、更に薬物依存による破綻した生活を、彼と関係した人々へのインタビューを中心として語られており、音楽業界とも薬物とも全く関係の無い読者でも、最後まで興味深く読み進めることが出来る。なお、チェット・ベーカーの詳細なディスコグラフィーも収載されており、CD蒐集家にとっても、嬉しい内容である。
今はなき、月間プレイボーイ2008年8月号にて、作家の辺見庸氏が千回聞いても飽きがこないばかりか、聴くたびに新たな発見がある。といわせた名盤。このチェット独特の虚無には、ハマリます。
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