シリーズ初の長編なので、登場人物も多く、やや混乱する。 慶次郎シリーズは、コンスタントに新刊が出ますね。 木戸番小屋シリーズも読みたいなあ ひとごろしさえ、最後にはいい人のように描かれています。 生まれは選べないという残酷な真実が描かれてもいます。 でも、人のつながりはありがたいものだとも感じます。
8編からなる、お捨と笑兵衛の界隈に住む人々にまつわる人情話です。 1巻目で泉鏡花文学賞をとり、この4巻目で吉川英治文学賞と再び賞をとったのですが、それだけのことがあり、物語の最後のほうの思わぬ展開に、心をかなり揺さぶられた話がいくつかありました。特に印象深かったのが以下の作品です。
「いのち」 ある出来事に苦しむ人たちに、お捨の言葉が、立ち上がるきっかけをつくります。これほど言葉がいきた物語があっただろうかと思うくらい、結末は本当に見事な話の流れでした。 「ぐず」 気にはなっていても心の奥底にしまっていたことに、ある事がきっかけとなり、やっと行動を起こした女の人の話です。ほろりとさせられる結末で、15年という年月の重さが、最後の文章によく表れていて、希望ある未来の扉を開けたような終わり方で、最終話にふさわしかったです。 他に、「奈落の底」も、長年にわたり凝り固まっていた人の気持ちをほぐした、いい話でした。
文庫本の解説に、この木戸番夫婦のことを、「積極的に手を差し伸べたり、アドバイスをするわけではないが、二人との何気ない会話を通して、自分の進むべき道を切り開いていく」と書かれていましたが、本書の「いのち」は特にそれを感じる作品で、かなり強い印象を残しました。そしてこの解説も、小説の素晴らしさを実に上手く説明していました。
NHKの金曜時代劇(いまは木曜時代劇)は、時々、見物を提供してくれる。前回は「蝉しぐれ」、そのあとはこの「慶次郎縁側日記」だ。古くは山本周五郎、最近では藤沢周平など、下級武士や庶民の生活や人情の世界を描いた作品は、私たち日本人にとってなくてはならないものだと感じる。現代劇でリアルで、それでいて人情のある世界を描く事はなかなか難しい。縁側日記は人情ものにコミカルな味が加わり、いつも楽しませてくれた。すでにシリーズ3まで放映されている。脚本もなかなかいいが、キャスティングが素晴らしい。とくに、高橋英樹の相棒を演じている石橋連司、岡っ引きのまむし役の奥田瑛二は、この番組の香辛料のようなもので、この二人にスポットがあたった回はとくに面白い。ゲスト出演の俳優も個性的で、それも楽しみだ。出来がいいので繰り返し見るにたる内容だ。シリーズ4はあるのか。それを楽しみにしている。
全7作の短編小説集です。時代小説ですが、当時の世相や風情の要素は少なく、理屈では説明できない人間や男女の心の動きや不思議さに焦点があたった内容です。人情物、というより、人間ドラマ、という感じでしょうか。ただ、全体的に微妙な心の動きを表現しているせいか、ドラマティック性はなく淡々としています。心がホックリくるような作品もあるのですが、感情移入できない作品もあり、悪くはないのですが全体的にはあまり面白くありませんでした。
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